株式会社ジズコ

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テレビュー社の新型アイピースをフィールドテストする___Stephen James O'Meara、Astronomy (May 2008)


見掛視界100度のイーソス13mmのことを耳にし、それに何の意味があるのか、どのような力が潜んでいるのかは、実際にイーソスを私が所有する同社製NP-127 F5.2屈折望遠鏡に装着してみてはじめて分かった。まるで不思議の国のアリスのようにガラスのなかへと吸い込まれ、未知の星空の世界を探訪...「これまではとまったく違う世界」を体験する。

天の窓
そり座の球状星団M4(5.6等)からはじめる。M4を導入するため、NP-127で30倍、実視界2.2度を実現するパンオプティック22mmを使う。
パンオプティック22mmでみるM4は、やわらかく丸く広がっている。あかるいが、ぼんやりとした星団の「傷あと」が北から南に走る。視野東端にはオレンジ色のアンターレスが鎮座、北西の等距離にはシグマScorpiiが輝く。 すべての対象が乳白色の星の光を背景に輝き、ところどころ淡い星雲の筋がこするようにみえている。まるで芸術家の筆からかもし出されたかのようである。
アイピースをイーソスに取り替えてみると、にわかにとまどう。視野全域はまったく同じ1.9度なのだが、M4をおよそ倍の倍率でみていることになる。同じ球状星団がこんどは、くっきりとした暗いレーンで囲まれたあざやかな恒星からなる月の大きさになる。中央のあわい「傷あと」は、球状に輝くあわい恒星を背景に、シャープに結像した10~12等の恒星になってみえてくる。
パンオプティック22mmでは容易に認識できなかった外側を取り巻く光輪の姿も、球状星団M4の中心まわりに、一連の星の光が長く平行に密生し、太い放物線が形成されているのが判る。暗い背景により、M4だけでなくNGC6144の明るさも助長され、星の光で照らされる不規則な終端と、わずかに凝縮されたコアのあるはっきりとした球状星団に変わる。
広視界で拡大された対象の「WOW」係数は、「あわく不明瞭な対象」を観測したいアマチュアならだれもが高く評価する。さらに、イーソスは、とりわけ幅が10′を下回るディープスカイ対象を見つけ出して確認するときも時間の節約になる。  たとえば、白鳥座にある幅27″のまばたき星雲(NGC6826)など。22mmのアイピース(30倍)なら、実際、星の光にしかみえないが、イーソスを装着し倍率を上げることにより、小さく広がるディスクのような星雲であることが判ってくる。  従来のアイピースなら視野外にある対象も、イーソスなら有効視野内に飛び込んできて、比較対照できるメリットを感じる観測者も数多く出てくるだろう。また、コメットハンターにしても、より広い領域を高い倍率でカバーできるため、淡い彗星をとらえるチャンスが高くなる。
著者所有のパンオプティック22mmでプレアデス全体の明るさは増すが、イーソスでは23 Tauri周辺の「ぼんやり係数」がなくなってしまう。その周辺に稲妻のごとく走るガーゼのパッチのような星雲(メローぺ星雲)は、南(NGC1453)に押し流されるブライダルベールから、分離する。
モータードライブがいらない!
モーター駆動の架台を持たない私は、惑星を高倍率でのぞくと、狭い視野をすぐに消えてゆく対象を中心にいくどとなくもってこなければならない。こんなとき、イーソスの広い視野があると、観測時間も必然的に長くなる。
たとえば、2007年12月、火星が対衝をむかえたこと、私の口径127mmの屈折望遠鏡では150倍から250倍で、赤い惑星の詳細を十分得ることができる。そこで、イーソスを3倍バローレンズと組み、166倍、満月を超える大きさで快適に観測した。
月観測を好むアマチュアにとって、シャープな詳細を月面いっぱいにとらえるイーソスは、思わぬメリットをもたらしてくれる。月のディスクを三次元の曲線でながめることができる。イーソスで月をのぞくと、月の軌道上から月の丸い地平線をながめているようだ。倍率が低く、視野が狭ければ、こうはいかない。
唯一無二の存在か?
それでは、イーソス以外のアイピースが不要になるかというと、決してそんなことはない。惑星やディープスカイ対象を観測するには、166倍を超える倍率が必要になることもある。シーイングがすばらしくよいある夕方、口径1インチにつき75倍まで倍率を上げる。通常の上限は口径1インチにつき50倍だが、実際、明るい惑星状星雲なら1インチにつき100倍まで上げてとらえることもできる。 最後にまた、M4とその周辺の話をしよう。2つの球状星団の比類ないみえ味をもたらしてくれるイーソスだが、限界もある。たとえば、パンオプティック22mmを通してみるM4を包むみごとな天の川などは、倍率を上げるとその醍醐味が損なわれてしまう。
イーソス体験を制約するのは、まさに使う人の想像力そのものである。沈みゆく太陽の青い閃光をとらえようと、著者自らが企てたプロジェクト。同プロジェクトは、2007年5月24日に成功する。この写真は、著者所有の30mmレンズを付けたキャノン20Dを、イーソスに装着し、太陽のディスクがハワイ、マウナロア火山のふもとに沈みはじめる最後の瞬間を撮影したもの。
2007年、11、12月、COMET 17P/HOLMES(ホームズ彗星)は、満月の大きさを超えて現れる。著者所有のパンオプティック22mmでみた同彗星もわるくないが、彗星の内部構造をさぐるにはアイピースを変えなければならない。イーソスを使うと、彗星の幅は2.5倍に広がり、その詳細もよく判る。
ヌケのよさにおいてもイーソスは比類ないが、オリオン星雲(M42)のように極めて詳細に観察できる対象や、淡くひろがるM4まわりの淡い星雲などは、イーソスよりパンオプティック22mmのほうが観やすい。2度にも及ぶプレアデス星団をつつむ広大な星雲のように、不定形に流れ輝く繊細な対象は、光を凝縮する低倍率でとらえるのがベストだ。 とはいえ、テレビュー社の新型アイピース『イーソス』の性能は素晴らしい。高倍率と広視界があいまって、天文仲間とも新たな輝きを分かち合い、無限の可能性を秘めた星空探訪に導いてくれるだろう。

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