株式会社ジズコ

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テレビューデロス vs テレビューイーソス、Neil English, Steve Ringwood, Astronomy Now (April 2013)


テレビューデロス

メガネを掛けて望遠鏡を覗くユーザーにとって、アイピースのアイレリーフが足りないことはいつも悩ましい。テレビューデロスはこの悩みを解消してくれる。しかも、より広い視野で...by Neil English

オリジナルモデルにして、最も人気のあるテレビューデロストリオ

天文に関するちゃんとした書籍を調べれば、所有の望遠鏡にベストなアイピースがすぐに判る。F10を超える焦点距離の長い望遠鏡なら、近代的設計のアイピースに多少の問題があろうとも、コマ、非点収差、像面湾曲などの収差はほとんど気になることなく、シャープでコントラストの高い像を結ぶ。ところが、F6の望遠鏡で安価なアイピースを使うと、設計の限界がにわかに顕在化する。視野中心の恒星はシャープでくっきりだが、軸を外れるほどに、ピンポイントであるはずの恒星はその歪曲収差を増すことになる。こうした収差を抑えるには、質の高いアイピース設計が不可欠になる。

惑星専用アイピースで積み重ねてきた伝統的英知についても、同じことが言える。レンズ枚数が少なく、透過率が高いという点で、一般的には、質の高いオルソー、プルーセルが推奨される。ただし、その信頼に足る設計のアイピースはすばらしい像を結ぶ一方、メガネを掛けて観る人には、視野全域を見渡すことがとても難しい。

いまでは、二兎を追うこともできる。ニューヨークに居を構えるテレビュー社は、あらゆる特性をワンパッケージにまとめたアイピースのラインナップ「デロス」を市場投入。同社のシニアオプティシャン“Paul Dellecchiale”の名にちなんで命名されたデロスはすべての焦点距離で20mmのアイレリーフを備え、72度の見掛け視界に誘う。

フィット感と仕上がり

発売当初のオリジナルデロスを受け取る。焦点距離は17.3mm、10mm、6mmの3本。いずれも、しっかりとした造りとすばらしい質感はテレビュー社ならでは。高さ調整のできるアイガードにより、大きなフィールドレンズと目の距離を最適に保つことができる。その調整操作も比較的容易。ブラックアウトすることなく視野全域を見渡せるところまで、アイガードを少し引き上げるだけ。昼間のうちに、この調整操作に慣れておくとよい。明るい光の下で視野絞冠を見てもホコリが無い。すべてのレンズに施されたマルチコートもこれまで見てきななかでも秀逸。全体的に非常によくできた設計である。

デロスのように心地良さを極めたアイピースが発売される度に出る問いのひとつだが、惑星観測ですばらしい実績を残してきた定評あるオルソーアイピースなどにとって代わる価値があるか否かという問いである。バーダー社製オルソー6mmとデロス6mmを、幾夜も慎重に比較する。いずれのアイピースもすばらしい像を結び、コントラストが高く、散乱光もほぼ同じレベルで感じることはない。サイズと見掛け視界の違いはさておき、両者の優劣を述べるのは本当に難しい!オルソーの限られた見掛け視界42度がディメリットであると言えるのだろうか。私の意見はノーだ。惑星や近接連星の姿を詳細に観測するのに、視野が大きくても気が散ってしまうと考える意見もある。視野が小さい方が対象をより適切に囲んで観ることができるとさえ言う人もいよう。

デロスの他のアイピースと比べる一方で、ひとつ大きなあらさがしてみる。デロスは小さなアイピースに比べかなりの重量級だが、所有するアイピースのなかではすばらしい性能を示す。重量級と軽量級のアイピースを差し替えながら観るとき、そのたびに鏡筒バランスを調整しなければならないことはすくなからず不満がつのる作業。しかしながら、こうした点を除けば、デロスをシリーズで揃えたくなるだろう。

テレビューイーソス

アイピースはどこまで広角になるのか?
見掛け視界110度に及ぶテレビューイーソスに挑む
Steve Ringwood (Astronomy Now 現機材コンサルタント)

望遠鏡のアイピースは、ガリレオが見掛け視界3度、20倍で月の三分の一をやっと捉えていたこれから進化を遂げ今日を迎える。1979年、世界初の見掛け視界82度の天体アイピースで特許を取得したのがアル・ナグラー。今日、100~110度を誇るイーソスが広角アイピースのゆるぎない存在となる。待ちに待ったイーソス21mm、10mm、SX4.7mmを手にしたので、2台の望遠鏡を用意する。

2013年初頭、木星が夜空を飾る。口径305mm F10のLX200を出し、さっそくイーソス10mmを覗く。木星の両側には4つのガリレオ衛星が並ぶ。305倍で観ていることになるも、木星の東側に浮かぶイオから、西側のカリストまで、イーソス視野全域の半分に収まる。実視界1/3度で詳細を豊に捉えた木星システムの姿は要注目、わくわく感はいっきに高まる。

見掛け視界110度のイーソスSX 4.7mmに切り替える木星を648倍で観る。有効最高倍率の限界に近づくも、その夜の条件は運よく極めて良好。木星のブラウンとマスタードイエローの横縞パターンをリッチに捉える。驚くべきことに、視野は狭くなるも10分もあり、イオとする宇宙船は、アイピースの視野冠を意識することなく、その実体を捉えることができる。

イーソスを口径305mm F10鏡筒で評価した後、口径255mm F4.3のニュートン鏡筒を使ってみる。焦点距離が短い分、低倍率になり、視野も広くなる。51倍で捉える月は、イーソス21mmの2度の視野に余裕で収まる。ディープスカイには歓迎されない月が姿を消すと、あらゆる星団やガス星雲のすばらしいパノラマが眼前に繰り広げられる。この広角アイピースを使って判ったことのひとつは、焦点距離の比較的短いニュートニアンには良質のコマコレクターが必要であること。ただ、コマコレクターを使わなかったとしても、ひとつの視野にすっぽりと収まるプレアデスの姿はいつまでも私の記憶に残るだろう。

いずれのイーソスも、驚くべき光景を比類ない倍率で魅せてくれる。小さな望遠鏡にはそぐわない重量級アイピースだが、1キロのイーソス21mmが、所有するコロナドPSTですばらしい効果を発揮してくれる!

デロス vs イーソス

イーソスをレビューしたSteve Ringwood、デロスをレビューしたNeil Englishの二人が膝を交え、「イーソスvsデロス」、「ベストな組合せ」について語り合う。

イーソス、デロスいずれのも広角アイピースで、その造り、光学性能とも、非常に高いレベルに仕上がっている。100~110度の長大な見掛け視界全域で良好な収差補正を実現したイーソスが天文市場で大ヒットした後、デロスはより低価格ながらイーソスレベルの性能を誇り、メガネを掛けて観測したいユーザーにもやさしいアイピースだ。アイレリーフを20mmにも伸ばしたデロス。見掛け視界は72度になるが、それでも十分に誇るべき広さだ。

このすばらしい性能を発揮するアイピースの光学系は複数のレンズで構成され、その分重くなるのは避けがたい。なお、デロスのレビューではふれなかったことだが、鏡筒が軽量級の場合、アイピースを替えるごとに重量バランスを調整し直すのも面倒かもしれない。それでも、レンズ枚数が比較的多いことから懸念される本体内部の散乱光 (ゴースト) はどちらのレビューでも感じとれない。考え抜かれた設計とすばらしいコーティング性能の結果だ。

イーソスの場合、実際の視野環が有効視野周辺の外にくるほどの広さがあるため、「観る人と宇宙とのあいだにあるはずの望遠鏡とアイピースが消え去る」といった過大評価さえも許されてしまう。アイレリーフの長いデロスはメガネを掛けて観るユーザーに好まれ、天文経験が比較的少なくても使いやすいかもしれない。

いずれのアイピースもほとんどの望遠鏡で問題なく使えるが、リッチフィールドのニュートン鏡筒なら、パラコアタイプ2など、良質なコマコレクターを併用するのがベスト。一方、F値の大きな望遠鏡でも、イーソスとデロスは性能を見事に発揮する。

焦点距離の異なる3本のデロスをレビューしたNeil氏は、惑星、二重星の観測に、6mmを最も頻繁に用い、17.3mm、10mmと続く。これら3本の発売後、テレビュー社は3.5mm、4.5mm、8mm、12mm、14mmと市場に投入する。

それでは、デロスとイーソスのどちらを選ぶべきだろうか。見掛け視界72度と100度プラスのどちらか、もちろん、予算にもよる。デロスアイピースは敬意に値するラジアンの価値ある後継者でありながら、イーソスよりはるかに安価に入手できる。100度という見掛け視界に魅せられたユーザーもいれば、72度くらいが自分のニーズにマッチしているという意見もある。あるいは、両方の見掛け視界を混ぜて選ぶことがベストな選択肢かもしれない。ただ、どのように選んでも、トップクオリティーと、天体観測に没頭できることが約束されるのは、テレビュー社に抱いた期待どおりである。


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