株式会社ジズコ

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テレビューデロス 惑星観測に衝撃を与えたワイドフィールドアイピース
by Erik Wilcox ASTRONOMY TECHNOLOGY TODAY (Nov-Dec 2011)


惑星専用アイピースの存在意義は一確かに理あります。ここ数年、駆動装置の装備されてない望遠鏡でディープスカイ天体を中心に観測している。最近、何夜か、土星、木星、金星、火星、水星に鏡筒を向けたときも、惑星をはじめて観たときと同じ不思議な感覚がよみがえる。惑星観測では、ナグラーやイーソスなどのワイドフィールドアイピースで「十分」満足でしていた。「惑星専用アイピース」の見え味もよいかもしれないが、オルソーのように視野が狭く、アイレリーフも短いアイピースは好んで使ったことは無い。そんななか、テレビュー社より発売される見掛け視界72度、アイレリーフ20mmのデロスは、大いに気になる。

新月の前に、テレビュー社よりデロスの10mmと6mmが届く。手にしたデロスのすばらしい品質、細部に至るまで行き届いた配慮はいつものテレビュークオリティだが、アイレリーフをユーザーの好みにピタリと合わすことのできる「スライド式アイガード」は感動もの。ラジアンの「クリックストップ式」とは違い、デロスのスライド式アイガードは高さを無段階に調整できる。デロスのネームリングをつかみ、アイガードバレルを時計と反対回りに回して緩め、アイガードを好みの高さに合わせる。高さを決めたら、バレルを逆に回して固定する。これ以上シンプルなメカニズムはない。デロスの見口は、他のテレビューアイピース同様、「折り畳み式」。

デロスが届いたのは、新月の前、かつ、近所の観望仲間といっしょにセッションを予定していた夕刻。私たちの家から4ブロックほど離れたところに住む友人は、口径60cm、F4を収納する電動式4.3mドームを所有。2ブロックほど離れたところにも、口径50cm、F4.5の望遠鏡があるので、私の40cm F4.5は小さな方だ。ディープスカイを堪能した後、後半は、デロスを持ち出して60cm鏡筒で木星を観測。標高1,524mの外気は14.4℃、風が少しある。Sky Quality Meterは21.93を示し、大口径60cmドブソニアンに装着したアイピースに木星を捉えたとき、そこから60cmも離れていないナイトビジョンにも木星が完璧に浮かび上がる。問題のないコンディションだ!

巨大な60cmドブソニアンで木星の巨大ガス惑星捉えたのは深夜近く、木星の高度はまだ十分高くはなく、60cm鏡筒にデロス6mmを装着して得る460倍は高すぎる。デロス10mmでの276倍ならちょうどいい。木星自体もクリスプで、その伴星のディスクもくっきりと捉える。

デロス10mm、イーソス10mm、プルーセル10mm、ナグラー6_9mmを比較。このなかではナグラー6_9mmの倍率が少し高くなるため、パラコアを外すことで、他の10mmアイピースの倍率に近づけて比較する。

ひとつは、木星がアイピースの視野周辺に近づいたとき、青い色合いがつくかどうかを観てみたい。以前ラジアンを何本か持ち惑星観測を楽しんだが、わずかな色づきが気になっていた。もちろん、多くのアイピースでは、絞り環近くで明るい天体を覗くとわずかに色づきがある。かといって、従来の「惑星専用アイピース」では見掛け視界が狭く、電動追尾しない望遠鏡では使い勝手がよくない。デロスなら、こうした心配には及ばない。木星の自然な美しさと色合いが視野周辺まで際立つことに驚きと感銘を覚える。わずかな青い色合いが観えたのは、木星がデロスの視野の外に出た直後だけ。デロスが特別な存在に思えた瞬間である。見掛け視界72度は、その端から端まで、本当に有効かつパーフェクトな視野だ。

デロス視野周辺のシャープネスは掛け値なしにパーフェクト。恒星を視野のどこにもってきても、パーフェクトでテキストブックどおりのピンポイント星像を結ぶ。像面湾曲や非点収差は皆無。夜空をパンすると糸巻形ひずみをわずかに感じるも、あのすばらしいナグラータイプ6に比べてもずっと少なく、見え味を損なうものでは決してない。

驚くべきは木星の詳細。くっきりとした7つのバンドを数え、バンドの中のフェストゥーン、うねる雲を観ることができる。それも、木星が頭上にあるわけでもなく、最高とは言えないまあまあのシーイングでのこと。同じ焦点距離10mmのデロスとイーソスの比較を繰り返す。非常にきわどいところまで見分けなければならないコンテストなので、私自身かなりの時間を要した。

色づきもアイピースの大切な要素。たとえば、イーソスの色づきは「ピュア」かつリアルで、ナグラータイプ6をはるかに凌駕すると覚えている。それだけに、デロスの色補正レベルがイーソスよりわずかながらもピュアなことに驚く。すなわち、木星の色は、デロスの方がイーソスよりも「白」が際立つ。ナグラーで観ると、すでに知れていることだが、トーンが明らかに「温かい」。私見ながらも「よりリアルなトーンをみせてくれる」イーソス、とりわけデロスが私の好みだ。

二晩が過ぎ、数人の仲間と自宅で合流し、今度は私の40cmドブソニアンで木星をもう一度観測することになる。自宅の標高は1,372m、今夜は数日前に60cmドブソニアンで観たときよりもシーイングがはるかに良い。

シーイングが良いだけ、デロス、イーソス、ナグラーの違いが容易に見分けることができる。コントラストは10mmのデロスが高いことで全員が一致。木星のクラウドバンドはデロスの方がわずかに観やすく、ナグラータイプ6と比べるとその差はさらに大きい。私の40cm F4.5ドブソニアンにパラコアと併用したデロスを装着してパーフェクトな倍率 (210倍) にすれば、その差はより顕著だ。ここでも、6mmのデロスを口径40cmに付けた倍率ではテストが難しい。

ある平日の夕刻を過ぎたころ、80mm F7屈折望遠鏡で「ちょい観」を楽しむことにしたが、結局、3時間ものセッションになる。南西方向の木々から木星が顔を出し始めたので、6mmのデロスを装着した屈折望遠鏡を向ける。93倍で観る木星はクリスタルクリア―、良い屈折望遠鏡で木星を楽しむことはよくあるが、その醍醐味を新たにする。デロスで捉えた木星は漆黒の背景に収まり、唯々華々しい。普段はほとんど使わない2倍バローを取り出しデロスをつけてみると、そのパーフェクトな組合せに驚く。アイレリーフは極めて快適な長さ、「ブラックアウト」もなく、視野周辺まで難なく覗くことができる。当然のことながら、デロスと2.5倍パワーメイトを併用したときを凌ぐ。

のぼり行く上限の月もじっくりと時間をかけて覗く。10mmと6mmのデロスは明るい月をパーフェクトに捉え、目立つ収差の類いも無い。ここでも月は漆黒の背景に収まり、その姿は立体的に浮かび上がる。まるで、双眼装置で覗いている感覚だ!

倍率の違いは別にして、10mmと6mmのデロスは同じ光学系だ。10mmのデロスに2.5倍のパワーメイトを併用することで、6mmのデロスと近い倍率で比べてみられるも、決定的な違いは見いだせない。これまでの観測経験を踏まえ、2.5倍パワーメイトが拡大効果以外何も加えない光学系として定評があることから、こうした比較も妥当かと思った。

結局、10mmと6mmのデロスとの時間を心行くまで堪能。それぞれ、387g、454gと軽量で実に使いやすく、なかなかの性能を発揮したテレビューラジアンをはるかに凌駕する。イーソスやナグラータイプ6と比べても、コントラスがわずかに高く、より詳細を捉えるデロスには本当に驚かされる。デロスで星空を覗くと、アイピースの存在が目の前から「消え」、ただ観測し続ける自分がいる。これまで手にしたなかでも最も使いやすいスライド式アイガード、本質的にパーフェクトな光学系、どこから見ても文句のつけどころがない。常により良いアイピースへの探求を忘れないテレビュー社だが、デロスもその例外ではない。結論: 惑星アイピースに興味があれば、最有力候補に検討すべきはテレビューデロスだ。


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