株式会社ジズコ

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マジェスティ係数
コントラスト、倍率、視野のつながり by Al Nagler


マジェスティ係数の要約

より広い見掛け視界(ディープスカイをより詳細にとらえる)を、より小さな射出瞳径(より暗い背景で、より淡い恒星をとらえるため)との組み合わせで得られる劇的な効果を表す係数「マジェスティ係数」。視野絞径が同じ (実視界が同じ) でも、見掛け視界が異なる2本のアイピースを任意に選び、各見掛け視界の比を三乗にした値を「マジェスティ係数」と定義する。

例) (100°/70°)3 = 2.92 "M.F."、 (70°/50°)3 = 2.74 "M.F." 、 (100°/50°)3 = 8 "M.F."

2007年4月から多くのイベント会場でイーソス13mmをお披露目してきましたが、このアイピースが観望体験を新たなレベルにできたことを十分確信しました。われわれの確信のよりどころは、テレビュー社側の予断、広報、誇大宣伝のいずれでもなく、多くのユーザーが慣れ親しんだ天体を観たときのリアクション以外なにものでもありません。イーソスの成功を十分な自信をもって迎えるも、100度に及ぶシャープな視野が真に意味するものが何であるのかを具体的に知りたかったし、いま現在もその思いは同じです。

4月のNEAF展示会の直後、“アイピースジャンキー”として名高いRodger Gordonから、「まぎれもなく、これまでみてきたなかで最高の広視界アイピース。神が天文愛好家なら、これこそ神に選ばれたアイピースだ。この文面は自由にお使いいただきたく」と書かれた文面を頂戴する。ありがとうRodger、君の抑えの効かない情熱的な宣伝文句を引用させてもらう前に、自分で“呼び水を引く”ようなことは避けたかったからね。

しばらくの間、イーソスへの反応がどうして圧倒的にポジティブだったのかを熟考しました。自分自身がそれを本当に理解したなら、そのことを数値化できないだろうか。そして、Stellafane (米国でメジャーなスターパーティ会場) で観た二重星団が、その方向性を示してくれます。

1991年Sky & Telescope誌で倍率について書いた記事が鍵になりました。低倍率の結論を、次のように表した記事です。「目標天体を楽に囲むことのできる最も高い倍率で観るのがベスト。倍率が上がれば夜空の背景が暗くなり、淡い恒星も浮き出て、より詳細を観ることができる。結果的に射出瞳も小さくなり、視力障害の影響も最小化できる」。

イーソスのポテンシャルについて、より一般的な結論を次のように表します。

星夜、散開星団、球状星団、星雲、銀河などのディープスカイ観望では、観る天体を囲むことのでき、なおかつ、最も高い倍率を選びます。ただし、夜空の背景が真っ暗にならないこと、大気が分解能に影響を及ぼさないことが前提です。射出瞳が小さくなることで夜空の背景が暗くなり、一定の明るさで輝く恒星のコントラスが上がる一方、倍率が上がることで、広がりのある天体構造がより詳細に観えてきます。より広い見かけ視界のアイピースを使うことで、観望体験を最大限に引き出せるのです。

結果的に、コントラスト、倍率、視野のつながり、すなわち、私の提唱するマジェスティ係数が大きくなります。

同じ実視界を可能なかぎり広い見掛け視界で捉えると、倍率は最大となり分解能が上がり、射出瞳が小さくなった結果、背景が暗くなりコントラストが上げることは明らかです。こうしたコントラスト、倍率、視野の組合せが、いわゆる「WOW (ワオ)リアクション」、すなわち、「マジェスティ係数」であると考えます。Tom Trusockはカナダで開催されるStarfestレポートの中で、「同じ実視界をより高い倍率で捉えれば、夜空は暗くなり、より詳細が観えてくる。」と最も簡潔に述べています。また、2007年のSky & Telescope誌にDennis di Ciccoによるイーソスレビューがありますが、そこにもよく似た感想があります。"「30センチ鏡筒の場合、いつもはスターホッピングには広角アイピースを使い、詳細をみるときには高倍率アイピースを使うが、イーソスはその両役を一本で果たしてくれる。スターホッピングに十分な広さがあり、かつ、淡い恒星を浮き立たせ、銀河や星団の詳細を分解するだけの倍率がある。」偶然ですが、彼の記事にもまた二重星団のイラストが描かれています。

望遠鏡とアイピースの基本用語

見掛け視界: 望遠鏡に装着していないアイピースを空を覗いてみたときの端から端までの全長。実視界の算出式には使われない。

射出瞳: アイピースによって捉えられた対物レンズの像。見掛け視界全域を見ることができる位置。

F値: 望遠鏡の口径と焦点距離の比率・・・撮影時に重要な数値

視野絞環: 実視界と見掛け視界のサイズを制約するアイピースバレル内のリング

焦点距離: 光学系の入り口から焦点までの有効距離

倍率: 対象の視野角の相対的変化

実視界: 望遠鏡にアイピースを装着したときにみえる空の端から端までの全長。

望遠鏡とアイピースの基本公式

倍率

= 対物の焦点距離 ÷ アイピースの焦点距離、または

= 対物の直径 ÷ 射出瞳径

F値

= 対物の焦点距離 ÷ 対物の直径

視野角

= アイピースの視野絞り径 ÷ 対物の焦点距離

射出瞳径

= 対物の直径 ÷ 倍率、または

= アイピースの焦点距離 ÷ 対物のF値

それでは、マジェスティ係数を数値化してみましょう。偉大なる交響曲や建造物の荘厳さを数値化することはできなくても、すばらしいディープスカイ観望には、以下に示すマジェスティ係数の数値化は意味があると思います。

見掛け視界が、50°、60°、68°、82°、100°のアイピースを選びます。次に二重星団などの天体を決め、F4の望遠鏡に見掛け視界50°のプルーセル26mmを装着し、その視野で二重星団を適度に囲むと、射出瞳径は6.5mmになります。この望遠鏡の倍率係数を1とし、射出瞳径6.5mmのコントラスト係数も1と任意に定めます。したがって、実視界が一定なら、マジェスティ係数は次のとおりです。

マジェスティ係数= 1 (倍率係数) x 1 (コントラスト係数) = 1

次に、このプルーセル26mmを、見掛け視界100°、焦点距離13mmのイーソスアイピースに置き換えます。このイーソスでも実視界は変わりませんが、倍率は2倍、見掛け視界も2倍、射出瞳は半分になります。射出瞳径3.2mmは、射出瞳径6.5mmに比べ、面積でいえばわずか1/4になるため、夜空の背景も係数4 (コントラスト係数) の割合で暗くなります。倍率係数は2なので、詳細、すなわち、分解能も2倍になり、次の公式が成り立ちます。

2 (倍率係数) x 4 (コントラスト係数) = 8x マジェスティ係数

次の表は、実視界が一定であることを前提にし、上記見掛け視界の各アイピースのマジェスティ係数を算出します。

経験則で簡単に表すとすれば、実視界が同じ任意の2本のアイピースがある場合、それぞれのマジェスティ係数は、見掛け視界の比を三乗して出した値、すなわち、“(100°/70°)3=2.92”です。

マジェスティ係数のビジュアル化

イーソス13mm (左側) とプルーセル26mm (右側) で同じ実視界の二重星団をとらえたものです。イーソスの倍率係数は2倍ですが、コントラスト係数は4倍です。イーソス13mmのマジェスティ係数は8、プルーセル26mmの同係数は1、マジェスティ係数が8倍になります。たとえば、343mm F4の望遠鏡で実視界0.9度を得るには、イーソスなら射出瞳3.2mmの109倍、一方、プルーセル26mmだと射出瞳6.5mmの55xとなります。

※ TV-60isで撮影した二重星団の画像 by Robert Reeves


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