株式会社ジズコ

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アイピースで描くディープスカイアート


次の画像をはじめてみたとき、テレビュー社のスタッフは二重星団の撮影画像と取り違えたほどです。あとで撮影画像でないことが判りますが、才に満ちた巧みな手仕事と、アイピースを覗く目の良さがなせる業です。

Double Cluster (crop) by DeepskyLog user Tom Corstjens licensed by (CC BY-NC 4.0). Used by permission.

クリックするとトリミング無しの画像をフルサイズで見られます。“ペルセウス座で、美しく変容する、複雑で色彩豊かな星団。このスケッチは、3夜にわたり6時間以上掛けて仕上げました。”_口径40cm F4.2のAlkaidドブソニアンに、パラコアとデロス17.3mmを装着して観測。

この精緻な手作業による二重星団のスケッチはベルギー出身のTom Corstjens作。以来、彼のスケッチにはいつも感心させられ、彼のツイッターをフォローしていますが、いつも期待に応えてくれます。

M81 / Bode’s Galaxy by DeepskyLog user Tom Corstjens licensed by (CC BY-NC 4.0). Used by permission.

口径40cmを使い、コントラストのはっきりとしたM81を、Oesterputの透明度が高く暗い夜空の下、描きました。明るいところが中心の回転楕円体です。そらし目にすると北側にある渦状腕のはじまりが見え、よく観察すれば弧が西側に沿って渦巻くのが判ります。近接連星の近くでは、渦状腕が少し明るくなり、その後は背景に消えていきます。最初の腕部と中心のゾーンの間には暗いゾーンがくっきりと見え、その反対側にも2つ目の渦状腕による同じような暗い谷間があります。腕部は、中心部にある最前面の2星の近くで最もよく識別できますが、そこには淡い外側の支線と内側の領域を繋ぐ美しいパッチ状の弧があります。注意深く観察すると、広い中心ゾーンには、螺旋の位置を際立たせるやや明るい2つの曲線があるように見えます。”_口径40cm F4.2のAlkaidドブソニアンに、パラコアとデロス17.3mmを装着して観測。

各スケッチの角には、天体名、方位、位置、日付、観測機材などの情報です。いずれのスケッチも、口径40cm F4.2のAlkaidドブソニアンに、コマ収差を補整するパラコアを活用。常時使用したアイピースは、デロス、ナグラー、パンオプティックのいずれかです。夜空のコンディション情報とて、裸眼限界倍率(NELM)、狭域スカイクオリティメーター(SQM-L)の値、シーイング(S)、透明度 (T) を記載。アントニアディスケールにより、1は「良い」、5は「悪い」です。

Cone / Christmas Tree / Fox Fur Nebula by DeepskyLog user Tom Corstjens licensed by (CC BY-NC 4.0). Used by permission.

明るい恒星がクリスマスツリー星団の幹を形成、その周辺にはあざやかな近接二重星がいくつかあります。南部にツリーの頂点に明るい恒星が輝き、もう一つ、ほぼ同じ明るさの恒星が幅広の三角形をつくる、いずれも高いコントラストで捉えます。星団を凝視すると(初代星は描写済)、その領域は、明るい恒星にぶらさがるようなぼんやりとした霞で満たされてみえます。思わず主鏡の上に露が落ちているのではないかと疑うも、実は違います。さらに、像を移動させても輝きの位置は変わりません。星団から遠く離れると、背景は再び暗くなります。” _口径40cm F4.2のAlkaidドブソニアンに、パラコアと、Astronomik Hβフィルターを着けたパンオプティック27mmを装着して観測。

地方にある自宅の庭から観望するTomは、しばしば、より暗い空を求めてベルギー、オランダ、フランスにまでドライブで出かけ、ディープスカイの観望とスケッチを満喫します。そこで、アイピースを覗きながら描くスケッチテクニックについて訊ねてみました。

白い紙に普通の黒鉛筆(HB、1B、3B)でスケッチし、恒星は黒い細線で仕上げます。最後に、スケッチをデジタルスキャンし、 ダストを除き、GIMPソフトでテキストを加えるだけ。複雑なデジタル処理は行わず、用紙と鉛筆の自然な質感が保たれるようにします。

M99 Pinwheel Galaxy by DeepskyLog user Tom Corstjens licensed by (CC BY-NC 4.0). Used by permission.

330倍で観たとき、これを「渦巻銀河」と呼ぶわけが分かります。とりわけ、南に際立つ螺旋状の腕の美しさには驚きを隠せません。中心の核からわずかに外れ、腕は時計と反対回りに旋回。そらし目にすると、腕の部分で輝いているところが2か所あります。核の端には粒状が目立ち、北側には斑点がいくつもあります。さらに凝視すると、細い螺旋状の腕があと2つあり、そのうちの1つの西側に短いフックがあります。核をよくみると、北方向に薄く広がる構造がうかがえます。核の北側からは螺旋構造が現れ、核から離れて旋回する様子がはっきりします。ハローから離れた北側に淡い恒星のようなものが見えたのですが、明るく輝くHII領域です!”_口径40cm F4.2のAlkaidドブソニアンに、パラコアとデロス6mmを装着して観測。

Tomは、自らのシステムに選んだアイピースについて語ってくれました。

主にデロスを使っているのは、72度の見掛け視界がスケッチに理想的だから。視野周辺まで広々と使え、大きさも十分コンパクトなので、スケッチ用紙上に基準星を正しい位置に置くことができます。恒星は周辺までするどくシャープに結像し、天体の微妙な詳細をはっきりと捉えるレベルは、他のアイピースでは実現できません。

この20年、他ブランドのアイピースの他に、プルーセル、ナグラー、イーソスなどのテレビューアイピースを愛用しています。覗きやすく、迷光を遮るアジャスタブルアイガードを備えたデロスが私にはパーフェクトに近いアイピース。大きさ、重量ともに文句なく、口径40cmのドブソニアンの重量バランスを崩すこともありません。

Thor’s Helmet by DeepskyLog user Tom Corstjens licensed by (CC BY-NC 4.0). Used by permission.

シリウスから数度離れたところにあるとても美しい複合形状で、低倍率でも不規則な染みだらけの輝きが判ります。OIIIフィルターの効果は絶大で、中心部を明らかにしてくれ、北側もより明るく、よりシャープに捉えられる。倍率を200倍に上げると、より多くの詳細がみえてきます。中心部は、いくつもの明るい領域を含む西に向く弓型、ミストのなかには、明るい目印の中心星WR7といっしょに、輝くフィラメントと暗い斑点が交互に絡む。南は最初の角の根本で複雑な斑点がとても明るく輝く。北はとりわけ詳細な構造に富み、並んだ4つの恒星の周りには微妙な斑点を伴い、明るく細長い霧が漂う。そらし目にすれば、南の角に比べると微妙だが、「トールのかぶと星雲」の2つ目の角が見えます_口径40cm F4.2のAlkaidドブソニアンに、パラコア、デロス10mm、OIIIフィルターを装着して観測。


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