株式会社ジズコ

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テレビューAPOの設計と製造



ここ何年も、トリプレット/ダブレットの光学設計、レンズ素材などが、アポクロマート屈折望遠鏡の性能をどう決めるのかというトピックが、天文サークルのあいだでオンライン討議されています。このような疑問は、新たに天文愛好家が生まれるたび、これから先もずっと繰り返されることになるでしょう。この記事はテレビュー社のブログからの抜粋ですが、テレビュー社の100% APO屈折望遠鏡に考え方と組立工程に関することを述べていきます。

APO屈折望遠鏡とは?

この設問に対する反応からすると、交わされているディベートは聖書の一節や憲法改正の解釈に似ています。そこには正当な理由があります。大多数の参考文献によれば、アポクロマート対物レンズの定義は、3つの離れた光の波長を同じ焦点にしながら、そのうち最も離れた2つ波長の球面収差を補整する (対物レンズへの入射位置により異なるも、光が理想の焦点前後で合焦する) 設計のことです。

アポクロマートの定義は、その偉業を実現するのに必要な該当波長、光学レンズの枚数、光学「ガラス」のタイプを特定していません。さらに、より重要な球面収差の影響も無視されています。球面収差が補正されなければ期待通りの色補正ができてないかのようにみえるアポクロマート定義ができてしまいます。いずれにしても、「アポクロマート」を定義する境界線がないため、それを証明できる認定基準もありません。

それでは、望遠鏡のユーザーはどのようにして自分の望遠鏡がAPOであるか否かを知ることができるのでしょうか。ある映画の名台詞を借りれば (Supreme Court Justice Potter Stewart’s)、「それをみたとき、それがわかる」ということになります。経験と期待がものをいう。1998年、アル・ナグラーが記した「アポクロマートの性能について」には、シンプルだが実践的な内容が展開されています。

アポクロマートの性能 - テレビュー社は“エキゾチックガラス”という用語使います。フローライト鏡筒に比べ技術レベルで劣るのではないかと思う人もいますが、正しい解釈とは言えません。APOクラスの高性能鏡筒に比べて自社鏡筒の性能を誇示したいのではなく、自らのポジション明らかにすべきときと考えました。テレビュー社では、輪帯球面、球面色収差、交錯ポイントの詳細に踏み込むことなく、200倍で観たとき、シリウスの縁が青く滲まない対物性能をAPOクオリティとします。

テレビュー社が現在製造している天体望遠鏡はすべて、業界で類をみない多彩さ、性能、携帯性を兼ね備えたAPO屈折望遠鏡です。いずれも一生ものとなるべく造りこまれ、やがては次世代まで使っていける天体望遠鏡です。

高品位な造り

“テレビュー”を比類ない存在の代名詞としているのは、一流の光学性能を超えた、それぞれの機材の手作り感です。いまでもはじめて分離式対物レンズの天体望遠鏡を製作したときと変わらず、設計どおりの光学性能に到達するまで、対物セル内のレンズのポジションを人の手作業により、0.1mm単位で巧みに調整していきます。

光学系のアッセンブリとコリメーション

手作業で巧みに調整される接眼部

接眼部もまた、決して侮れないもう一つの望遠鏡の重要な構成要素です。ドローチューブの動きがスムーズでなかったり、重量でたわんでしまったりすれば、接眼部の反対側に高価なレンズ群を採用しても、アイピース/カメラを通す像はだいなしです。

さいごに、コントラストをできるかぎり高く保つための作業工程に入ります。それぞれのレンズにはその硝材に適したマルチコートが施され、金属部品の内側には迷光を押さえるための様々な工夫が施されます。

そのため、それぞれの望遠鏡は初工程から最終工程まで「ひとり」の担当に任されます。テレビュー社の製造工程には組立ラインや作業分担がありません。光学系と機械部品は検査、適合、組立、調整、精査の工程を経、社力を尽くした望遠鏡が完成します。

テレビューの小口径ダブレットAPO屈折望遠鏡

Tele Vue-60Tele Vue-76Tele Vue-85では、できるだけコンパクトな形状でアポクロマート性能を発揮できる望遠鏡を目指しました。対物をダブレットで設計することで目標とするアポクロマート性能に到達できたうえ、重量バランスを崩し、組立・材料コストが増しても、ユーザーに提供できる光学メリットがほとんどないトリプレットは採用しませんでした。鏡筒の仕様が示すとおり、口径が小さくなるほど、対物のF値は小さくなっています。 3モデルとも極めて近い光学性能を発揮する一方、口径が小さくなるほど、焦点距離を短く設計することが可能です。

テレビュー大口径ナグラー・ペッツバール APO屈折望遠鏡

アル・ナグラーは、ベッツバールのポートレイトレンズコンセプトを採用。レンズ間隔の広いダブレットを用いペッツバール(Josef Petzval)式光学系を基に、アイピース検査を目的に設計した短焦点広角屈折望遠鏡「5” F4 MPT(Multi-Purpose Telescope)」で特許を取得したのは、30年以上も前のこと。その後20年間、“multi-purpose”コンセプトのパーフェクトな工学系に向けて改良を重ねた結果、2001年、Nagler-Petzval 101が誕生。Backyard Astronomer’s Guideでは、“この光学系にこれ以上改善の余地無し”との評価をいただきました。により、F5.4という短焦点設計を保つ一方、新ガラス素材を採用することで、鏡筒長をさらに短くするだけでなく、理想的な色収差補正レベルと、よりフラットな像面を実現しました。さらに、Tele Vue Imaging System (“is”) 鏡筒では、接眼部を2.5インチ仕様にし、オプションアクセサリを充実させることで、大フォーマットでピクセルの小さなCCDチップに対応する鏡筒を実現しました。

トリプレット設計では実現できない特性

NP101is、NP127isに組み込まれた4枚の対物レンズは、分離式ダブレットを2組み合わせた設計です。この設計を、対物の後郡が大きな拡大域に配され、前群で補正できない収差を補整しているため、「組込型フラットナーを持つダブレット対物」、と誤って解釈されることがあります。指定のガラスを配した構成は、F値のきわめて小さなF5.4、F5.2で理想的に収差補正するのに不可欠です。F値をあえて小さく設計したのは、眼視、撮影ともにできるかぎり広い実視界を実現しながらも、軸上および横方向の色収差、波長ごとの球面収差、非点収差、コマ、像面平坦性を理想的に補正するためです。レンズ構成をどのようにしたとしても、以上のすべてをトリプレット設計で満たすことはできません。

ナグラーペッツバール“is”鏡筒の組立

構造的に複雑な“is”鏡筒の場合、口径の小さなテレビュー鏡筒の製作工程の他に、is鏡筒固有の組立・検査工程が要求されます。撮影機材の重量を考慮し、接眼部には“たわみ”テストを実施。ドローチューブ先端に4.5kgを超えるウェイトを装着した状態で、ドローチューブの前後駆動範囲のほか、回転方向の4か所で、ドローチューブに偏りが無いことを1/1000インチ単位で測定検査します。次に、メカニカルアッセンブリのアライメントをレーザーで調整します。光学系を組み込み、コリメーションを終えた後、テレビュー社独自のコリメーティングリングに据えると、視野/写野の周辺性能を確認しながら、ティルト調整機構を備えたエンドリングが像面と並行になるように調整します。

加重たわみ測定、機械部のレーザーアライメント、フィールド検査


テレビュー社のサービス体制

テレビュー社は、自社製の全望遠鏡で、修理、修復、アップグレードを承ります。詳しくはお問い合わせください (Tele Vue Scope Renaissance!参照)。


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