株式会社ジズコ

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カメラ、双眼鏡、望遠鏡の働き、by Al Nagler CEO, Tele Vue Optics


一般的に知られた仕様の意味を理解すると、望遠鏡のコンセプトが判りやすくなります。一方、誤解を招く仕様であったり、専門用語でない場合、紛らわしいことも少なくありません。


カメラ

カメラには、主として、焦点距離とF値という仕様があります。

1.焦点距離

焦点距離はフィルム上の画像サイズを決めます。ズームレンズなら、35mmのときは“広角”、50mmで”標準”、135mmで”望遠”です。フィルムサイズが35mmなど一定の場合、焦点距離により”視野”が決まりますが、この仕様は無視されたり、直接的に示されることがありません。”視野”とは実際に見られる画角であることは当たりまえですが、焦点距離に反比例します。ズームレンズを135mmにしたときに倍率は最も高く、視野は最も狭くなり、35mmなら、倍率が最も低く、視野は最も広くなります。実際、視野サイズの約4倍 (135/35)、視野領域の16倍です!

多くの人は当然のようにF値と焦点距離を混同し、F値を変えると魔法のように画像サイズも変わると思い込んでいます。画像サイズと視野サイズに影響するのは焦点距離のみです。

2.口径比、すなわちF値

たとえば、レンズバレルに1:2と書かれていればF2のことで、フィルムに到達する光円錐の”太さ”を示します。光円錐が”太ければ太いほど”、光が多く、露出も短くなります。F値は、実際、レンズの有効径に対する焦点距離の比です。焦点距離50mm F2レンズの有効径は25mmです (レンズ径はインチ、焦点距離はミリで表すことがある_1インチ=25.4mm)。ほとんどの人はF2のレンズはF4よりも明るい (小さい) ことはすぐわかりますが、明るさが2倍ではなく4倍であることに気づきません!また、F2レンズの方がシャープだという誤解もあります (理屈上は可能でsも、現実的には希なケース)。

F値はカメラにとって重要な値ですが、フィルム感度と被写体の明るさは露出変数なので、望遠鏡で観たときの像の明るさには直接関係しないことがわかります。“望遠鏡ファン”になりたての写真ファンにとっては、衝撃的なことかもしれませんね。

一方、仕様の中でF値についてまったく触れない、とてもありがたい双眼鏡の業界があります。


双眼鏡

双眼鏡のことを誰もが「平行に並べた2本の望遠鏡」と解釈する訳ではありませんあ、望遠鏡の働きを解説するときには便利な解釈です。双眼鏡は、像を正立にするプリズムは別として、ちょうどカメラレンズのように像を形成する対物レンズと、像を捉えるフィルムの代わりに像を直接見る拡大系とで構成されます。この拡大系のことを、アイピースとか接眼部レンズと言います。対物の焦点距離とアイピースの焦点距離の比により (ここでも比に注目)、双眼鏡や望遠鏡の倍率が決まります。

双眼鏡の仕様

6 x30、7 x35、7 x50、10 x50など。混乱を招くF値を使うことなく、7x35なら7倍で直径35mmの対物口径です。ここでは「7 power」とは言いません。「対物の焦点距離がアイピースの焦点距離の7倍」なのか、「焦点距離20mmのアイピースを備えた焦点距離140mmの対物レンズ」なのでしょうか。あるいは、焦点距離140mm、口径35mmの対物なのでF4なのか。ここではどうでもよいのですが、いずれも、望遠鏡のことを詳しく論じるときには面白い事実関係です。

「口径35mm ÷ 7倍 = 射出瞳径5mm」のように、口径を倍率で割ると“射出瞳”の直径が出るので、口径はとても重要な仕様ですが、間接的な意味合いがあります。7x50の双眼鏡の射出瞳径は7.1 mm です。単純な計算ですが、カメラではF値が像の明るさを示す一方、双眼鏡の場合、自分自身の目の瞳径に対する双眼鏡の射出瞳径が、像の明るさを決めます。双眼鏡の射出瞳は、双眼鏡を目から離したときに見える小さな光の円ですが、実際は、アイピースにより形成された対物の像を見ているのです。

1. 瞳サイズ

目の瞳径は、昼間が2~3mmで、夜の暗さに目が慣れてくると7mmになります。双眼鏡の射出瞳径が少なくとも自らの瞳径と同じなら、双眼鏡の像は日常の明るさと同程度です。双眼鏡の射出瞳径が目の瞳径より小さければ、明るさは、射出瞳の領域と目の領域の比率で減少します。日中、双眼鏡の射出瞳径が目の瞳径5mmより小さければ、7x35双眼鏡の明るさは7x50双眼鏡の明るさとまったく同じですが、夜になると7x50の方が2倍明るく見えるわけです (50/35の二乗)!

2. 視野

他方、実際に見える視野の広さを示す双眼鏡の仕様があります。アイピースを複雑に設計することにより、大きなフィルムを使ったカメラのように、より広い領域の像を見ることが可能です。たとえば、同じ倍率で比較した場合、設計がシンプルなアイピースで見ることのできる領域は914m先で119mですが、アイピースを複雑に設計することにより、914m先で151mまで見ることができます。

ただし、一般的には、視野を広くするほど、周辺の像の輪郭がぼやけます。双眼鏡で夜空の天体を観るときは914m先で視野の大きさを測ることはできないため、仕様を実視野角 (914m先で119m)、すなわち7度に変換します。これが実視界です。この双眼鏡は7倍なので、アイピース内の視野は約50度に見えます。視野がより広いアイピースなら、アイピース内での見掛け視界を65度にできます。どのアイピースにも、アイピース固有の見掛け視界があります。

見掛け視界と実視界の関係はほぼ倍率に比例します。詳細は後述の「アイピースの種類」で論じます。


望遠鏡

望遠鏡でできても、双眼鏡ではその半部しかできないことがあります。望遠鏡なら焦点距離の異なるアイピースを自由に交換することで、ほとんどの倍率に対応できます。一般的な双眼鏡の口径は1から2インチですが、望遠鏡の口径は3、4、5、6、8、10インチ以上あり、高倍率でも、より大きな射出瞳径で明るい像を観ることができます。上限はありますが、望遠鏡はより高い倍率でより高い分解能で詳細を捉えます。詳細の見え方を制約する要素は、望遠鏡の品質、口径、地球大気の気流です。実際には、1インチにつき50倍が現実的な上限です。

4インチを超える望遠鏡の場合、対象の詳細は一般的に大気により制約されるため、200倍や300倍にしても、大気で乱されぼんやりとした像が拡大されるだけです。ではどうして大口径の望遠鏡があるのでしょうか。それは、「バケツの中の光の量」を多くすることで、恒星を大幅に明るく、その数をより多く捉えることができるからです。シリアスな天体愛好家や天体撮影家は、淡い銀河、原始ガス雲、星団を狙って大口径を求める傾向があります。一般的な天文ファンや初心者なら、5インチまでの小さな望遠鏡でも、土星の環、木製のベルト、月のクレータ、多くの“二重星”を非常に良く観ることができます。

残念ながら、高倍率性能をうたうおもちゃレベルの望遠鏡も少なくありません。口径ℒピℒロ50mmのレンズを配した望遠鏡を貧弱なマウントに搭載して250倍で観ても、ビギナーのフラストレーションは増すばかりです。 倍率は対物の焦点距離をアイピースの焦点距離で割ることで算出できます。できるかぎり焦点距離の長いアイピースを使えば、倍率は最も低く、射出瞳径も最大になり、スポッティングスコープとして使っても、対象を最も明く捉えることができます。有効最低倍率は、鏡筒口径の1インチにつき約4倍です。


アイピースの種類

一般的に、F値が4-6と比較的小さな望遠鏡の場合、とりわけ視野周辺でシャープな像を結ぶには洗練されたアイピースが必要です。最近、マルチコートが施され、様々な焦点距離のアイピースが市場にあります。アイピースの性能をベストなレベルにするには、少なくとも4枚のレンズ設計が必要です。見掛け視界50度までならプルーセルはすぐれた性能を発揮、光学設計をより複雑にすることで、65度や80度までの見掛け視界を実行することも可能です。月を高倍率で観るときも、天の川を低倍率で眺めるときも、見掛け視界を最大に広げることで、“スペースウォーク”を体験できます。一般的な話ですが、見掛け視界を広げても、シャープネスは見掛け視界の狭いアイピースに劣らないだけでなく、大きさ、価格、重量などを無視すれば、見掛け視界の広いアイピースにはいくつものパフォーマンスメリットが潜んでいます。たとえば、シャープさに優劣のない見掛け視界50度と100度のアイピースを比べてみましょう。どちらのアイピースも焦点距離が同じであれば、倍率と射出瞳は同じですが、見掛け視界100度のアイピースの実視界は2倍 (4倍の領域) になり、広がりの大きな天体に有益です。一方、見掛け視界100度のアイピースは、見掛け視界50度のアイピースの半分の焦点距離で夜空の同じ実視界を捉えることが可能です。100度のアイピースは50度と比べたとき、倍率は2倍、分解能は高く、射出瞳は半分です。これにより、夜空の背景は4倍暗くなり、明るさは同じ恒星のコントラストが上がることで、さらに淡い恒星を観ることができます。倍率を極端に高くしないかぎり、背景は暗くなり、ディープスカイ天体の観え方は良くなります。倍率が上がるだけ、天体と背景は同じように暗くなり、コントラストが維持されるなか、分解能が上がるというメリットを享受できるからです。また、射出瞳が小さくなることで、目の乱視や、反射望遠鏡の副鏡の影の影響を最小に抑えられます。

アイピースバレル外径の規格は1.24” (31.7mm) と2” (50.8mm) の2つです。より一般的な1.25”アイピースの方が、その種類、品質ともバラエティに富んでいます。口径が大きく、上級社向けの望遠鏡の多くは、その視野を最大限に活かすべく2”アイピースを差し込んで使えます。当然のことならが、2”アイピースを使える望遠鏡には1.25”アイピースも使えますが、1.25”アイピースまでしか差し込めない望遠鏡に2”アイピースを使うことはできません。


望遠鏡の種類

1. 屈折望遠鏡

長い鏡筒と、その先端に対物レンズを備える屈折望遠鏡の姿は、伝統的な望遠鏡のようにみえます。通常、光軸調整が不要で、分解能の高い望遠鏡です。アマチュアが持つ一般的な口径は2.4”、3”、4”です。口径が2.4” (61mm)より小さければ、双眼鏡やスポッティングスコープなどの方が良いでしょう。屈折望遠鏡の一般的なF値は12や15なので、集光力を大きくしようとすれば、サイズが大きく、値段も高くなります。 極軸望遠鏡を使うときは、フラストレーション無しに運用できるよう、焦点距離が20mm以上で、見掛け視界ができるかぎり広い低倍率アイピースを1本、ぜひお選びください。天体用で、口径が3” (76mm) 以上の屈折望遠鏡なら、搭載する架台は赤道儀がお勧めです。F5からF8のAPOはポータブルで、視野も広く、使いやすい屈折望遠鏡です。"APO"タイプの屈折望遠鏡は、特殊なガラスを採用することで、一般的なガラスを使った屈折望遠鏡で見られる色収差を排除します。

2. 反射望遠鏡

多くの場合、発明者アイザック・ニュートンの名にちなんで“ニュートン鏡筒”と呼ばれ、鏡筒の底部に突ミラーを配して光円錐の焦点を結びます。鏡筒上部には小さな平面鏡があり、アイピースで像を捉える位置に向けて光を反射させます。パロマ天文台では、200” (5m) の反射望遠鏡が活躍しています。

価格的には、6" (150mm) ニュートン鏡筒が3” (76mm)の屈折望遠鏡に相当し、 8” (200mm) ニュートン鏡筒が4” (101mm) 屈折望遠鏡に相当します。集光力で比べると、ここで取り上げたニュートン鏡筒が同屈折望遠鏡の約4倍になる一方、光軸調整をたびたび行い、開放鏡筒のためミラーのクリーニングが必要です。F5鏡筒はF8鏡筒よりも視界が広く、よりコンパクトですが、通常、F8鏡筒の方がわずかに良い像を結びます。

2. カタディオプトリック

レンズとミラーを組み合わせた近代的な機材で、多才かつコンパクトな望遠鏡です。同じ大きさの反射望遠鏡よりも価格が高く、補正レンズの性質により、“シュミットカセグレン”または“マクストフ”と呼ばれます。

遠征に最適で、比較的軽い望遠鏡です。屈折望遠鏡同様、密閉鏡筒なので、光学系が汚れることなく、反射望遠鏡では像を観だすこともある鏡筒気流も防ぎます。ほとんどの場合、F値はF10からF15の範囲ですが、撮影用の場合はF5.6に設計されます。このF値でカタディオプトリックを作ると副鏡が大きくなるため、射出瞳の中心に大きなブラックスポットが生じます。高倍率にすれば分解能の問題を引き起こし、ごく低倍率にすれば影に悩まされます。したがって、F5.6のカタディオプトリックは、望遠鏡としての有効性はそこそこ、主に撮影レンズとして使います。」

“リッチフィールドテレスコープ (RTFs = Rich Field Telescopes)”

F4~F6の望遠鏡のほとんどは“リッチフィールドテレスコープ”に分類され、低い倍率、広い視野、大きな射出瞳で、天の川の広い領域を見渡せるため、文字通り、数え切れない星々が目に飛び込んできます。もちろん、スポッティングスコープとしても、カメラアダプターを介した撮影鏡筒としても理想的です。

ベストな“リッチフィールドテレスコープ”なら、2インチの広視野アイピースを装着できるはずです。RFTsには、屈折望遠鏡、シュミットニュートン鏡筒、ニュートン鏡筒、ドブソニアンがあります (砲塔のような木製経緯台にニュートン鏡筒を搭載した“ドブソニアン”は、西海岸のJohn Dobsonが考案)。F値がF8以上の望遠鏡に比べると、ほとんどのRFTsは高倍率での惑星観測には適しませんが、F5の“APO”屈折望遠鏡なら、高倍率でも優れた性能を発揮します。







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