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アイピースを選ぶことは簡単そうで案外悩ましいことです。

まず、望遠鏡に付属しているアイピースが必ずしもベストの選択とは限りません。 なぜなら、望遠鏡メーカーは、望遠鏡のフルラインナップに同じアイピースを付属させている例がほとんどだからです。当然、望遠鏡の口径やF値、反射式や屈折式など違う形式の望遠鏡であるにも関わらずです。 複数本付属している場合、すべてが無駄になってしまうことだってあるかも知れません。 望遠鏡の購入を検討していらっしゃる方、アイピースの選択にお悩みの方は、 このページをヒントにして納得のいく選択をしていただければと思います。
(新規に望遠鏡を購入する場合、条件に合わなかったら差し替えてもらいましょう)

アイピースは望遠鏡の付属品ではありません。 眼視観測にとってアイピースは望遠鏡光学系の 1/2です。 望遠鏡をグレードアップしたにもかかわらずアイピースは昔のまま、という方はいませんか? クラシックなアイピースを否定する訳ではありませんが、 現代のアイピースは、より使いやすく、より高性能に、より個性的になっていると思います。 少なくとも、短焦点望遠鏡が主流を占めるこんにち、 古典的なアイピースをあえて引っぱり出す意味はなくなったのではないでしょうか。 (古いアイピースではキズや汚れなどが付着しているために見え味が悪くなる例も多い)

高性能アイピースは決して安価ではありません。 ただし、一本のアイピースが望遠鏡の見え方を一変させてしまうことだってあるのです。 観測や観望、使用する目的は違っても、望遠鏡の能力を余すところなく引き出すことができます。 また、望遠鏡をグレードアップしても引き続き使っていくことができます。

高性能なアイピースへの投資は、もっとも手軽に性能アップにつながる効果的な投資です。
 

● アイピース選択の基本的な考え方
まず、5種類のアイピースがあれば、ほとんどの観測対象は効果的にカバーできます。

その5種類は、射出瞳径を基に決めるとよいでしょう。 射出瞳径とは、望遠鏡にアイピースをつけたときに、アイピースから出射する光束の直径のことです。 「射出瞳径=アイピースの焦点距離÷望遠鏡のF値」で求められます。 射出瞳径を 6、4、2、1、0.5mmに設定し、この数字にあなたの望遠鏡の F値を掛ければ、 必要なアイピースの焦点距離が判ります。

一例を挙げてみましょう。口径80mm、焦点距離480mmの望遠鏡があるとします。 F値(口径比)は「焦点距離÷口径」で求まりますから、この望遠鏡の場合 F6になります。 これに、先ほどの数字を当てはめますと「6x6=36、4x6=24、2x6=12、1x6=6、0.5x6=3」 36、24、12、6、3 の各値がこの望遠鏡に適したアイピースの焦点距離(mm)になります。

注;ニュートンやカセグレン、シュミカセやマクストフカセのように、光路中に副鏡がある光学系の場合、 射出瞳径6mmになるアイピースを使うと、副鏡の影が気になることがあります。 特に観察者の瞳が開かない明るい環境で使う場合や、副鏡の直径が大きい場合は要注意です。また、口径20センチを超える望遠鏡の場合、射出瞳径0.5mmといった高倍率は、シーイングの影響などにより満足に使えるチャンスが少なくなります。


● 実視界(視野環径)を考慮する必要性
アイピースの選び方>実視界の概念をご参照ください。上欄でご案内した倍率(射出瞳径)を基準にする選び方に併せて配慮すると、いっそう明確にアイピースを選ぶことができます。また、50.8mm径アイピースの意義もよく判ると思います。

最初に選択するアイピースは、お手持ちの望遠鏡で、できるだけ広視界(大きな視野環)を実現するアイピースです。もちろん上欄でご案内した射出瞳径への配慮を忘れないでください。例えば、広実視界が目的だからといってPlossl 55mmがすべての望遠鏡にマッチしないのと同様、個々の望遠鏡のスペックや観望環境(背景の暗さ)までを配慮して慎重に選ぶようにしましょう。最初の1本が決まれば、あとは視野環径が1/2倍ずつになる組み合わせ(40mm → 20mm → 10mm・・)や、1/1.4(40mm → 28mm → 20mm → 14mm・・)倍になる系列で選んでゆきます。もちろん、焦点距離が重複しない組み合わせになるよう配慮します。
高倍率観望においては、視野中心に置いた対象を観察することが多くなり、実視界を基準にする意味が薄れてきますが、中・低倍率では、その観望対象の面から実視界が重要なデータになります。

テレビューアイピースの視野環径などのデータはこちらです。


● 広角アイピースのすすめ
ほぼ等しい焦点距離のアイピースの場合、見掛け視界の広いアイピースの方が 実視界は広くなります。見掛け視界の広いアイピースの方が、 より素晴らしい「スペースウォーク」を体験できますから、できれば、あなたのコレクションに ナグラーシリーズのような超広角アイピースを一つ加えてみてください。
また、ドブソニアン望遠鏡や、フリーストップ経緯台で望遠鏡を使う場合は、 実用上の意味(高倍率でも広視界が得られる=追尾が簡単)という点からも、 超広角アイピースを選ぶことでより快適な観望を実現できます。

● メガネを離せない方への提案
メガネが近視または遠視の矯正だけでしたら、アイピースを覗く時は外しても大丈夫です。健常眼の方とピント位置が異なるだけで、ピントを合わせ直せば良いのです。しかしながら、乱視をお持ちの方は矯正が必須です。これまで、不便なメガネで苦労されてたはずです。そうしたひとのため、テレビューでは“ディオプトロクス”を用意しました。ディオプトロクスは夜間の瞳径にマッチした乱視補正ができることに加え、光学的に最適な位置に装着するため、メガネ以上の補正効果を発揮できます。また、惑星など高倍率観察でも大きな効果があるとの声も寄せられています。

● バローレンズの効用
バローレンズやパワーメイトは、アイピースのアイレリーフを維持しながら倍率を上げることができます。特に5倍の拡大率を持つパワーメイトは、長いアイレリーフを持った「覗きやすい」長焦点アイピースで高倍率を得ることができます。

注:バローレンズはアイピースへ入射する対物のF値を大きくし、アイピース性能を高める働きもあります。特に短焦点望遠鏡が多い現在、バローレンズやパワーメイトを積極的に活用しましょう。

パラコアのすすめ
ニュートン・ドブソニアンをお持ちの方は、ぜひ、パラコアを使ってみてください。 周辺像のみならず、視野全体のコントラストが劇的に改善され、対象の詳細が一層際立ちます。 特に、ナグラー、パンオプティックとの組み合わせでは、従来のコマコレクターでは実現しない (超)広角の視野隅々までピンポイントの素晴らしい星像で「スペースウォーク」が楽しめます。

注:当然ながらパラコアはアイピースの非点収差を補正しません。高性能アイピースを併用しないと効果がありません。 「コマ収差と思っていた星像の崩れは非点収差だった」ということはよくあります。

● 50.8mm径アイピースのすすめ
シュミットカセグレン鏡筒はその発売当初から、ニュートン反射や屈折望遠鏡も50.8mm径アイピースに対応できることが普通になりました。大型アイピースは、低倍率・広実視界の範囲を拡張し、望遠鏡の潜在能力を引き出すことができます。 特に小口径の屈折望遠鏡やニュートン反射で実現できる“リッチストフィールド観望”は、 これまでの天体望遠鏡の通念にはなかったゴージャスな星野です。

注:31.7mm径のアイピースのみを「アメリカンサイズ」と称している例がありますが、 テレビュー・ジャパンでは 50.8mm径を含めた総称でこの呼び名を使います。

● 双眼視のすすめ

ビノビューは、ほとんどの望遠鏡で使える双眼装置です。

「楽に観察できる」「立体的に見える」など双眼視のメリットは非常に多くありますが、 実際の観望インプレッションから、次の点を強調しておきます。

  1. より高いコントラストで観察できる。

    月・惑星観測への適性はもちろん、面積体の DeepSky対象も光量損失があるにも関わらず、 よく見えるのには驚かされます。

  2. 広角アイピースの視認性が向上する

    単眼視ではぐるりと瞳を廻さないと視野全体を認識するのが困難でしたが、 双眼では簡単に視野縁を認識できます。 ちょうど裸眼で片目をつぶると視野が狭くなることと関連しているのでしょうか?

広角・高品位アイピースとのマッチングは最高ですが、しかるべき出費も伴います。 文章で表現するのは難しいので、観望会や星祭り、あるいは弊社ショールームでご覧ください。

注: 屈折望遠鏡やニュートン反射では合焦のため「2x合焦レンズ」を併用する必要がありますが、 シュミカセは合焦範囲が広く、ダイヤゴナルを使っても「2x合焦レンズ」は不要です。

● 望遠鏡でなくアイピースを疑え
屈折望遠鏡では、ほとんどすべて、F6以上のニュートン反射やシュミカセでは、 高性能アイピースを使えば視野周辺に至るまで星像の崩れは許容範囲内です。 ただし、コストを優先したアイピースではこの限りではないかも知れません。 星像の崩れはそのままコントラストの低下につながります。 これでは、どんな対象を観察しても対物レンズの性能を発揮させることはできません。 観望会や星祭りなどを利用して、アイピースを差し替えて比べてみてください。 違いが確認できれば、あなたの観察眼がもう一段高くなった証拠です。

今までのアイピースで星像に満足がいかなくなったら、
思い切って高性能アイピースに投資しましょう。