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アイピースの選び方

望遠鏡で見る星は、その倍率(射出瞳径)によって、その様相をがらりと変えます。何気なく選んでいるアイピースですが、倍率という概念で考え直し、観望体験を重ねることで、観望対象にふさわしい「倍率」の理解を深め、いっそう対象に肉迫することができます。以下解説の「高倍率」、「中倍率」、「低倍率」、いずれの倍率でもアイピースの性能が「その見え味」に少なからず影響を及ぼすことを実感できるでしょう。


高倍率観望では、その解像限界は対物光学系の性能に依存しますが、その像質はアイピースが支配します。とりわけ、近年のF値の小さな高性能望遠鏡との組み合わせでは、アイピースやバローレンズの選択が極めて重要です。
一般的に、口径をミリで表した数字に1〜2を掛けた数値が慣用的に「高倍率」として認知されてきました。射出瞳径に換算すると1mm〜0.5mmの範囲です。望遠鏡の口径によっては、その値は上方、また下方にシフトしますが、ここでは一般的な概念に則って「高倍率とは射出瞳径1mm内外」と規定して話を進めていきます。

高倍率を得るには、次の2つの方法があります。

   1.) バローレンズなど拡大光学系を併用する方法
   2.) 短焦点アイピースを使う方法

1.) は、中・長焦点の覗きやすいアイピースで高倍率が実現できるほか、望遠鏡の実効F値を上げることで、アイピースの非点収差量が低減する効果も期待できるなど、メリットの多い方法です。詳細はここを参照してください。
プルーセルはバローと組んで、持ち味の「抜けの良さ」を保ったまま優秀な高倍率アイピースとなり、その像質は惑星観測家からも高く評価されています。また、パンオプティックは、特にパワーメイトとのマッチングに優れ、高倍率観望でも、その濃厚な色彩感とシャープネスを遺憾なく発揮します。実際にアイピースを覗くと、高いコントラストがあってはじめて、月面の微小クレーター(亀裂)や惑星面の微妙な詳細模様や色彩感を確認できることに気付くはずです。なお、ナグラーシリーズもバローやパワーメイトと組み合わせて高性能で使えます。ただし、全系での構成枚数(空気接触面)が多くなるので、惑星観測などシビアな目的には、短焦点の同シリーズ単体での使用をすすめます。

一方、2.) は、ラジアン、ナグラータイプ6 シリーズがそれぞれ3mm、2.5mmまでの短焦点をラインナップし、F5〜6クラスの鏡筒で最高倍率を得ることができます。両シリーズの6mm未満の短焦点アイピースは、視野内はもとより、射出瞳の周囲にさえ散乱光が発生しない"高倍率に特化した"スマイス系の遮光バッフル構造を有しています。高分解能でエッジの立ったシャープネスと、色彩感あふれる豊かな階調で観察できます。旧ナグラーで見るややソフト(パステル調)な惑星面との違いは一目瞭然で「新世代アイピース」を実感していただけるでしょう。なお、ドブソニアンなどフリーストップ架台で快適な高倍率観望を行うために、見掛け視界82°の超広角ナグラータイプ6は必須アイテムと申せます。

ナグラーズームは、ピント移動のないズーム操作で得られる「シンチレーションの変化に応じた瞬時の倍率変更」が可能。自動追尾の架台で使えば、異次元の快適さで高倍率観望を行うことができます。散乱光の少ない3群5枚というシンプルな構成と、徹底的な遮光処理により、惑星、重星観察時のコントラストを追求。全視野、全ズーム域でまったく瑕瑾のない光学性能を実現した最強の「惑星観測アイピース」です。

市場には未だに望遠鏡の性能を損なうバローレンズや短焦点アイピースが存在します。たとえば、クラシカルなオルソなどは、その曲率や磨きに問題のある製品が見受けられます。こうしたアイピースでも、主光学系の性能に依存して理論分解能の重星まで、たいてい分離できますが、惑星面の滑らかな階調は再現できません。また、バローレンズは、硝材や研磨、組み立ての精度基準が厳しく、非点収差が発生する粗悪品もあります。もちろん主光学系の性能を大きく損なってしまいます。一見リーズナブルな価格や、もっともらしい宣伝文句に惑わされることがないよう、観望会などを利用して自分の目で見て判断できればベストです。望遠鏡の性能を発揮できないまま使い続けることほど、不経済なことはありません。

テレビュー高倍率アイピースは、望遠鏡の性能を完全に発揮させることができます。



中倍率は低倍率と高倍率との間の"つなぎ"ではありません。
中倍率で見る星は、高倍率のように回折パターンに拡散することなく、ほとんど点に見えます。しかも、背景の夜天は充分に漆黒で、前景の星ぼしの色彩を際だたせます。また、アイピース視野外(遮光環外)の最黒から視野内の最輝星までの階調が、完全なグレースケールで構成できます。これは対象を豊富な階調で観察できることを意味します。そして、望遠鏡の極限等級が確認できるのもこの倍率からです。
中倍率は「星(対象)がもっとも美しく見える倍率」なのです。

ここでいう中倍率とは、射出瞳径2mmを基準に約3mmまで(注)の範囲の倍率のことです。
夏・冬の天の川と、春・秋の銀河団。望遠鏡の口径の違いで「中倍率」の最適な観望対象が異なってきますが、年中楽しめることは言うまでもありません。小口径では天の川に散在する小散開星団が恰好の対象(大口径機で楽しめる散開星団は、冬の天の川に多くあります)。また、春・秋の銀河の数かずや銀河団は、まさに大口径望遠鏡に絶好なターゲットですが、M番号を持った銀河は小口径機でも充分楽しめる対象です。 プルーセルで見るクリアなイメージは特に星雲暗部の再現に優れます(彗星の詳細観測にも好適)。アイレリーフの長いデロスやデライトはメガネやディオプトロクスが併用でき、乱視の影響をクリアして本来のシャープネスを遺憾なく発揮します。ニュートン反射のコマも押さえ込むほど芯のある凝縮した星像が特徴のパンオプティックは、星雲の淡いコントラストの検出に特に優れ、ディープスカイアイピースとしての定評を実感できます。星ぼしの色彩感はもちろん、微妙な等級の違いまで再現する透明感抜群のナグラーは、超広角の見掛け視界82°による、中倍率にもかかわらず、従来の低倍率アイピースに匹敵する実視界が得られます。見掛け視界100°をほこるイーソスは、ナグラーのダイナミックな星野をさらに拡張し、その収差を感じない「クリアで大きな窓」からは、密集した散開星団を微星に分離しつつ、同一視野に複数個とらえる(小・中口径機)、母銀河の詳細観察と同時に集う数々の伴銀河を検出できる(大口径機)など、まさに宇宙への窓を拡張した臨場感・・設計者ナグラーの言う「スペースウォーク」を体験することができます。

いずれも高性能なテレビュー中倍率アイピース群。秋の夜長に「星空のS席」へご案内いたします。

(注)大きなイメージスケールを有し、またシンチレーションの影響を被りやすい大口径機ほど、射出瞳径は大きく設定します。



低倍率で見る夜空ほど楽しいものはありません。ことに小口径望遠鏡では、対象導入を考えることなく、アイピースを覗いたまま「天の川下り」をすれば、美しいスタークラウドを背景に、散開星団や散光星雲などが続々と視野を横切って行くさまは、まさに宇宙旅行の醍醐味そのもの! また、OIIIフィルターを使えば、固有名のある散光星雲のほとんどが小口径機の観望対象になります(北アメリカ星雲や網状星雲の全景を見ることができるのは小口径機だけ)。大口径望遠鏡なら、ギャラクシーホッピングや凄みさえ感じるメシエ天体、OIIIフィルターを併用した散光星雲の詳細観望など、まさに低倍率アイピースの独壇場です。

低倍率(射出瞳>4mm)は簡単な倍率と思われがちですが、美しい星像で観察するのは意外に簡単ではありません。対物系の諸収差や光軸不良、アイピースの非点収差、反射望遠鏡での中央遮蔽やコマ収差、観察者の不適切な瞳位置や乱視による星像の乱れ、そして夜空を侵す光害光等々、星像を損うさまざまな要素が存在します。テレビュー社では、より完璧な低倍率観望のためのツールを用意しています。コマ収差が目立つニュートン/ドブソニアンには「パラコア」が効果的。乱視の観察者には「ディオプトロクス」が福音になります。目位置を完璧に調整できる見口構造を持つプルーセル55mmとパンオプティック41mmは、2インチ アイピースで最大の実視界をもたらすだけでなく、良好に補正された非点収差により視野いっぱいにシャープな像を結びます。いずれも、シュミットカセグレンなどF値の大きな望遠鏡に最適。ほとんどの散開星団を観望対象にできる実視界が得られます。「スペースウォーク」の代名詞ナグラータイプ5 31mmをはじめ、パンオプティック35mm、プルーセル32mmは、望遠鏡のF値を問わず、快適な低倍率観望を実現するアイピースです。

アル・ナグラー曰く「最適な低倍率は、対象をすっぽり捕らえることができる倍率の中で最も高い倍率を選ぶことです」。これは反射系で中央遮蔽の問題から逃れる意味からも重要ですが、なにより、避けることのできない光害光の影響を最小化して、対象をできる限り高いコントラストで観察するための最善の方法です。

なお、低倍率観望では、非点/球面収差の多いアイピースをバローレンズで救済することができません。また、パラコアを併用してもアイピース固有の収差がそのまま出てしまいます。こうしたアイピースは、いわばピンボケ像を覗いているようなものです。淡いコントラストの検出が命のディープスカイ観望にとって致命的です。「アイピースの性能は、望遠鏡の性能の半分」、何れ劣らぬ高性能なテレビュー低倍率アイピースで、リッチな星野を満喫しましょう!