新型パラコアタイプ2

コントラスト、分解能、限界倍率が向上!…マイク・ハービー

テレビュー社が送り出した初代パラコアは、単焦点ニュートン鏡筒に革命的な進歩を触発することになる。突然、F4.5鏡筒が普通になる。端的かつ正確に言えば、パラコア人気はおおよそ広い視野で星像の美しさを向上させたことにある。すこしわかりにくいが、より重要なメリットは、より多くの光をエアリーディスクに集約するだけでなく、より詳細かつ高い分解能で像を凝縮することで、像を補正することにある。コマは気にならないからパラコアは不要として観望するひとは、この点を見過ごしている。

近年、F3.66、F3.3、さらにF3、F2.5のミラーを製作するメーカーまでお目見えしている。そんななか、テレビュー社は見掛け視界100度のイーソスとパラコアタイプ2を登場させ、大口径観望をあらたな段階に導いた。

パラコアを使うとき、本当の役割はディフラクションリミテッドの視野を“見事なまでに”に広げてくれることを知っていただきたい。これまでずっと、“周辺までピンポイントな星像”に期待が寄せられてきた。こうした期待が数多くの望遠鏡とアイピースにより実現されるも、どんな条件の下でも同じであるとは限らない。望遠鏡の設計、部品の品質、光軸の状態、光の物理状況、個人の生理的体質などの違いにより、異なる状況が生じる。言い換えれば、「効果は人によって異なる」。

数年前、卓越したSteve Kennedy作の主鏡を備えた口径71cm、F3.66のStarstructure Newtonian (写真1) を購入。初代パラコアと、お気に入りのナグラーアイピースは、このような短焦点用に設計されてなくても、すばらしい性能を発揮してくれた。信頼できる旧パラコアは、後日アップグレードしたあのすばらしいイーソスとでも、なんとかその役割を果たした。しかしながらイーソス21mmをF3.66に装着したときは、その限界が顕在化しはじめ、口径61cm、F3.3に併用したときには、あきらかに限界を超えた。

新型パラコアタイプ2を使う

パラコアタイプ2を数か月前に入手した私は、驚くべきスターストラクチャー望遠鏡を製作したマイク・ザミットとともに、F値の小さな大口径望遠鏡を何台も広範にテストした。記事を書いている途中だが、新しいパラコアタイプ2は、イーソスアイピースにも勝るとも劣らないくらい、観望を劇的に進化させた立役者というのが私の結論である。

このテストでは、個人の視力が、望遠鏡に装着したアイピースの性能にどれだけ影響するかが判った。フロリダ州チーフランドにあるチーフランド・アストロノミー・ビレッジで行ったテストは、多くの天文ファンを集めて行われた。“星像は端から端までピンポイントだ”と言う天文ファンもいれば、同じ望遠鏡とアイピースの組み合わせでも、視野周辺の“フレア”や“コマ”が気に入らない者もいる。イーソスの視野全域をみることのできるひともいれば、そうでないひともいる。受け取り方の違いは、望遠鏡のF値が小さくなるほど大きくなることも判った。

視野周辺を観るために目をぐるりと回すことになり、周辺の星像は必ずしもピンポイントではないという観測者もいる。このように認められるシャープネスがひとによって異なるのは、観測者が視野周辺を観ようとして頭を動かすことで、自身の瞳の位置と、アイピースの射出瞳とのズレに依存することが多い。このことを、F値が小さいシステムほど瞳の位置がより敏感になることと考えあわせると、ひとは生理学的に多様であるということにより、「ある特定のアイピースで理想的な周辺像を維持しながら、どこまで単焦点化できるか」を確定することは極めて難しい。

複数の観測者のなかでも、比較的一致した意見がある。たとえば、ほとんどの観測者はF3.66の望遠鏡にイーソス21mmを装着したシステムがパーフェクトだと感じた。ところがF3.3のシステムでは、イーソス17mmが最も適したアイピースということになる。

以上、ひとの美的感覚を論じることになったが、ここに真の画期的な発明がある。すなわち、新しいパラコア2は、コマを補正しながらも、コントラスト、分解能、限界倍率がすべて向上するという偉業を成し遂げる。事実、観測者のだれもが最初に指摘するのは、向上したコントラストと、漆黒の背景である。アル・ナグラーの後継者ポール・デレカイは、F値の大きな望遠鏡をも劇的に改善させた。驚くべきことに、新しいパラコアタイプ2が威力を発揮するのは新世代の単焦点ニュートニアンに限らない。初代パラコアのユーザーなら、アップグレードを真剣に検討したくなるはず。



マギー・ライト




筆者: マイク・ハービー

たとえば、マギー・ライト(写真1)の反応がよい例だ。比類ない光学系で広く知られている口径40センチ、F4.3のスターストラクチャーに、往年の初代パラコアとイーソス21mmを装着したシステムでは、網状星雲のNGC-6960をフィルタ無しでも“すばらしく”捉えた。私は彼女の初代パラコアを、パラコアタイプ2に差し替えた。同じ対物、同じアイピースを覗いたときの彼女の第一声が“ウァオ!”…“UHCフィルタを装着みたい。あいまいさがまったくみられない!”。実際、漆黒の背景をバックに、網状星雲がより詳細に観えた。彼女は続けて視野周辺で星を入れ、その像が“パーフェクトな点”であることを指摘する。

次に亜鈴状星雲で目視できる恒星の数を測るため、望遠鏡をM27に向けた。初代パラコアとイーソス21mmの組み合わせで私は5つ、マギーは3つ識別できた(ここでも視力の違いが出る)。ここでパラコアタイプ2に変えると、マギーにみえる恒星は5つに増え、私の場合は6つになり、周辺で捉えたより微細な星雲状態について語った。

その他の対象でも結果は同じ。今度はM31に望遠鏡を向け、NGC-206の星雲がどこまで際立つのか観てみようと提案した。初代パラコアでも確かに識別できるが、パラコアタイプ2に変えると、M31の暗帯が突如として劇的に浮かび上がる。「パラコアタイプ2のおかげで“口径を大きくした”ような効果があったと言う観測者もいた。

後日テレビュー社から聞いたことだが、パラコアタイプ2のチューナブルトップの調整レンジがオリジナルモデルよりも広くなったことが、そうした効果に貢献していることを知る。とりわけ、イーソス21mmやナグラー31mmなどは、タイプ2の新しいチューナブルトップにより、理想的な補正位置を確保できる。概していえば、F値の小さな反射望遠鏡に、パラコアタイプ2+イーソスのような超広視界アイピースを装着すると、劇的な眼視観望これまでにないレベルで体験できる。ハシゴを無くさないまでも、低くする一方、分解能、コントラスト、実視界を最大化する新型パラコアタイプ2は、最もエキサイティングな大型ドブソニアン観望を身近にしてくれる。

一方、新しいパラコアタイプ2の造りも、テレビュー社ならではの美しさが漂う。1.25インチアダプタはぴったりと収まり、とてもスムーズに取り外しできるだけでなく、暗闇の中でも望遠鏡に容易に装着できる。ポジションを変えるための回転がより容易になり、さまざまなセッティングが判りやすく正確に印されている。全テレビューアイピースのためのセッティング表も同梱。コンプレッションリングは2本の固定ネジで締められアイピースをよりしっかりとホールドし、アイピースの光学アライメントをより適格に行える。新しい設計は従来のものよりもわずかに長いが、大きくなった印象はない。暗闇のなかでは、調整の容易さや、固定ネジの数が増えたこと以外、新旧の違いは判らない。