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TeleVue-102

2001年9月5日午前1時。都内で前日23時過ぎまで接待で費やした体は、重かった。
自宅最寄駅、坂戸に着いたのは午前0時40分。普段では、もう次の日を考え体は自然と休息の体制に入り、意識は星空のこととは無縁な世界に飛んで行くところ。その日は違った明るい月光に、体は無条件に反応し、自宅へ急ぐ気持ちが逸る。なぜなら、太陽Hα像に威力を発揮した、鏡筒の真の力を見極めたかったから。満月過ぎの月は、雲間ながらも、その青い光を私に浴びせ。天頂に近づく土星の輝きは、何時もと異なるように感じさせる。地平線より昇ったばかりの木星も、鋭く光る。

TV102、素ピン*のファーストライトは月であった。現在持つアイピースの中で、最も焦点の短いラジアン4mm、またそれは、最も私を鋭眼にするアイピースだ。バローのような邪道は使いたくない。fl880mmにより、220倍を出す。Starsplitter500mmを持つ身にとって、それは大した倍率では無い。しかしこれは多寡が口径100mmの望遠鏡ではないか!この口径、この倍率で、暗さを感じ無い。まるで、大口径の望遠鏡を、覗いている様だ。当然チェックを入れる対象は、
馬鹿の一つ覚え、プラトー底面クレータ。行き成り目に3つの光が飛び込む、目を凝らすとケフェウス座の星の並びのように、5個のクレータが確認できる。昔を思い出し、あの火星奇跡の夜の会話を思い出す。底面クレータを、Starsplitter500mmで何個確認できるか。確か7個? しかし、あの夜はベストシンチレーション、今夜は比較に成らないほどの悪さだ。また、月面の海の波模様が美しい。クレータから伸びる光条も、艶やかだ。

そして、土星!
なに・・・、このカッシーニの空隙。輪の傾きが観望に適している時期だとは思う。空隙が濃い、そして信じられないほど太い。このシンチレーションの悪さ。しかし、その黒く太い模様が、全周を回っている。普通、見栄味が悪ければ、こんなに濃く空隙が見えるはずがない。しかも、土星本体の模様も明瞭に見えているのだ、繰り返すこんなにシンチレーションが悪いのに。この望遠鏡は、コントラストで見せる鏡筒なのか!

次に、地上高度20度行くか行かない高さにある、木星。普通、見たくもない対象位置だ。全く予想通り、その姿は悪気流の下で、ヨレヨレの姿となっている。しかし見てしまった、気流の後ろにある木星の姿を。我々が何時も口にする言葉だ、良い望遠鏡は悪気流の後ろの惑星像に、ピンを合わせられると。しかし、その前提はあくまでも、大口径で有ったと。こんな口径にこの言葉が使えるとは。

ナグラーに伝えよう!このピンの鋭い、コントラストの素晴らしい望遠鏡に、もっと大きな合焦ノブを、与えよと。

最後に、
また一本 感動を呼ぶ鏡筒を、手に入れた自分を、誉めてあげよう!

埼玉県入間郡 横尾雅司(Masashi Yokoo, Iruma-Gun,Saitama)

* 注:TV-102鏡筒は、コロナドAS1-90フィルター装着用としてご購入いただきました。


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TV102を使用して

TV102を購入して以来、全くといっていいほど天候に恵まれず悶々とした日々を過ごしてきましたが、2月に入ってやっと102を本格的に使用することができました。その印象は、正直言って、こんなに見えるとは思いませんでした。最初の対象は土星。全周にわたるカッシニの溝はもちろん、本体の模様もくっきりと見え、さらに4〜5個の衛星を確認。これほど鮮明な土星を見たのは生まれて初めてのことです。次いで木星。これも縞模様が濃く、しかもかなり詳細なところまで見ることができました。その後も様々な天体をみましたが、感動の連続でした。

102の購入にあたっては、その値段から、かなりの思い切りが必要でしたが、今は買ってよかったと思っています。102は10センチ屈折が備えるべき性能を限界まで発揮することができる優秀な望遠鏡であると思います。


福井県福井市 山田泰弘(Yasuhiro Yamada Fkui-Shi,Fukui)

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ワン・オー・ツー インプレッション
           Sky & Telescope誌 2001年3月号 
"TeleVue-102" 
テレビューのニュープレミアム屈折「4インチF8.6」

           By デニス・デ・チコ ( Dennis di Cicco)


20世紀、天文アマチュアの屈折望遠鏡への情熱はさまざまなかたちで変貌を遂げた。1609年ガリレオが小さな屈折望遠鏡を夜空に向けてから60年も経たないうちにアイザック・ニュートンはすばらしいニュートン反射望遠鏡を世に出す。宇宙時代の幕開けとなる1970年初頭は、いくつかの望遠鏡メーカーが出現し屈折望遠鏡の市場に参入した時代である。

最新のガラス素材とコンピュータによる光学設計技術を駆使し高級屈折望遠鏡を造るアストロ・フィジックス、タカハシ、テレビューなどのメーカが存在しなければ、ベテランの天文アマチュアが使用する屈折望遠鏡は市場から姿を消していたかもしれない。屈折望遠鏡への情熱を絶やすことのなかったアマチュアは、再び歓喜の声を上げるときが到来した。私はそうしたアマチュアのひとりではないが、新しいTele Vue-102を手にしてから数週間後、観望家の抱く屈折望遠鏡に対する尽きることのない情熱を理解することができた。

Tele Vue-102は102ミリ(4インチ)F8.6の屈折望遠鏡、2枚玉対物レンズでアポクロマートを実現する。鏡筒先端の金属レンズキャップから2インチ接眼部のキャプティブロックネジまで他のテレビュー屈折望遠鏡同様一級のクラフツマンシップが貫かれ、ほぼパーフェクトな光学系を包み込む。Tele Vue-102はOTA(Optical Tube Assembly = 鏡筒のみ)で提供されており、ハードケース以外のアクセサリーはすべてオプションである。

鏡筒自体はきわめてソリッドで、容易にダメージを受けない設計である。駆動部分は引き出し式のフードと、接眼部のラックアンドピニオンギアだけ。接眼部の動きは極めてスムーズなうえつまみが大きいため高倍率でもジャストピントに追い込める。さらに、重いアイピースやカメラを装着したときや、鏡筒を天頂付近に向けたときなど、焦点位置を固定するためのフリクション調整ネジも装備されている。

星像はほとんど教科書どおり。220倍のディフラクションパターンは内外像とも対象で、焦点の外側で薄い黄緑、内側で紫マゼンタ色が見える。ただし、色収差のテストで重要なのはジャストピントに追い込んだときである。ベガなど最も明るい恒星や、シーイングの影響でディフラクションリングが揺らいだときの一時的な現象でわずかな青ハロが見受けられた。なお、大気が落ち着いたときには同じ現象は見られなかった。さらに、175倍以下ではどの恒星でも色はなかったし、満月の縁を観測しても色のないシャープネスを確認できた。

特に、こと座のイプシロン(ダブルダブル)をとらえたときのことは注目に値する。Tele Vueのラジアン3mmを使って293倍でみたが、両二重星ともきれいに分解した。明るく黄色に輝く星と、淡く青色に輝く星のコントラストが絶妙で、まるでカラフルなアルビレオのミニチュア版のようであった。

鏡筒内部には内面反射を効果的に抑制する黒い生地が施され、バッフルは不要である。視野に満月を入たときで、漆黒の背景に、月の縁に近い極めて淡い恒星をとらえることができた。

コントラストの高さは惑星にもその威力を発揮する。木星と土星を観たときには時間を忘れ、数分のつもりが何時間も経過してしまった。木星本体には衛星の影がシャープな黒点として映る。10月26日の夜、この口径の望遠鏡で最も詳細なガリレオ衛星をみることができた。木星の雲を背景に、ユーロパの淡いディスクも簡単にとらえた。平均的なシーイングのもとでも、4つのガリレオ衛星は明瞭なディスクにみえる。とくに、比較できる恒星が同視野にあるときはなお明らかだ。土星の表面には常に雲によるバンドが見え、通常は大口径の独壇場であるリングの詳細を、この望遠鏡で何度も確認した。


オプション
Tele Vue-102の発注は、レストランでアルカルトメニュを注文するようなものだ。ほとんどのユーザーは2インチのスターダイアゴナルを必要とする。標準ミラーの反射率は96%、エバーブライト仕様の反射率は99%である。ほとんどの人はアイピースを覗いてその違いは分からないだろうが、ユーザーによっては価値あるものである。いずれも48mmのフィルターネジが施されている。

この望遠鏡ではほとんどすべてのアイピースが使える。24個以上の複数メーカーのアイピースを使ってみたが、2インチダイアゴナルを装着した状態で使えた。テレビューのプルーセル55mmを使えば、16倍で3°の視野が得られる。射出瞳径は6.4mm、ほとんどの人の現実的な上限に近い。低倍率になると瞳径が中年の人の目の許容範囲を超え、同倍率における視野が最も明るくても、102mmという対物口径の最大集光力を活かすことができない。

テレビューのラジアン3mmで高倍率にすると、293倍、視野が12.5分になる。すでに、通常の推奨最高倍率「口径1インチあたり50倍」を超えているが、月、惑星、二重星の観測にはしばしばこの倍率を用いた。実際は、「口径1インチあたり100倍」で満足したことが何度もある。本誌でどれだけ高倍率に挑戦できたかという記録を論じるつもりはないが、この望遠鏡をテストしているときはラジアン5、4、3mmと5xパワーメイトを活用した。

Tele Vue-102にアイピースを装着するには、さまざまなアダプターがオプションで用意されている。初心者の場合、ほとんどのケースで4インチのマウントリングが別に必要だ。このマウントリングにはカメラネジに対応するメスネジが施されているが、カメラ三脚に搭載する場合は、かなりヘビーデューティで動きのスムーズな三脚をお勧めする。テレビューのジブラルタル三脚ならより快適だろう。今回のテストではジブラルタル三脚を使用しなかったが、ジブラルタル三脚は信頼すべき筋から高い評価を受けている。最初は駆動装置のないマウントに高倍率性能の高い望遠鏡はふさわしくないと思っていたが、ラジアン3mmでも惑星が視野の端から端に到達するのに45秒もあることを考えると、充分検討する価値がある。

テレビューは赤道儀を出していないため、テストにはビクセンGPDマウントを使用した。標準のGPマウント、ロスマンディGM8、セレストロンCG-5なども選択肢に入れることができる。鏡筒自体は3.6キロだが、オプションのマウントリング、スタービーム(NEW)、スターダイアゴナル、テレビューアイピースを装着すると6キロになる。


フィールドにて
数週間Tele Vue-102をテストしたなかで常に感じたのは、アイピースを通してみる眺めのすばらしさである。この望遠鏡の品質がそう語らせるのは言うまでもないが、4インチという口径が生み出す不思議なパワーを感じるのである。ニューイングランドですごした穏やかな秋の夜は、4インチのディフラクションリミットをみる機会を何度も与えてくれた。これは非公式なテストではあるが、この4インチ屈折望遠鏡の横に6インチのマクストフを並べておいた。4インチにとって「パーフェクト」なシーイングの頻度は、6インチのそれの2倍はあった。

また、250倍のエアリーディスクとディフラクションリングは、4インチの方が容易に識別できた。口径が大きいほどエアリーディスクは小さくなるが、それを見るには倍率を上げ、かつ、より良いシーイングに恵まれることが前提となる。

逆に、エアリーディスクが大きくなれば解像度は低くなる。同じ明るさの二重星を分解する望遠鏡の能力を規定するドーズリミットは、4インチの口径で1.1秒である。エアリーディスクよりも小さな詳細は見えないと言われていたが、そうではなかった。11月8日の夜、満ちかける凸状に膨らむ月が4.6等星うお座33番星の真北を横切った。月の南の丘と、星のエアリーディスクを同時に充分な倍率で容易に観ることができた。エアリーディスクより小さな、月を線状に走る影の詳細をクリアにとらえた。トーマス・ドビンやウィリアム・シーハンが小口径で土星の輪の見え方の詳細をS&T 2000年11月号(117ページ参照)の記事で書いていたことを、私自身が直接体験したのある。

Tele Vue-102をテストしたことで、小口径によるディープスカイの考え方を新たにさせらあれた。もちろん、おとめ座の13等級の銀河をとらえるのに適した望遠鏡ではない。だからといって、ディープスカイを真剣に取り組む際にも無視できないのがこのTele Vue-102である。メシエやクロードウェルのディープスカイ対象なと、ほとんどのアマチュアがまず最初にねらう対象にはうってつけだ。それはここで述べるまでもなく、ウォルター・スコット・ヒューストン、ジョン・マラス、ステファンジェームス・オーメーラなどの有名なディープスカイ著者には、4インチ屈折望遠鏡によるディープスカイ体験が詳しく述べられている。

Tele Vue-102はどのような使い方をしても、オーナーがきっと感謝したくなるすばらしい望遠鏡である。


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テレビュー102による天体撮影 
(スカイ&テレスコープ 2001年3月号から)
                By クリス・クック(Chris Cook)


Tele Vue-85を2年間屈折撮影鏡として使用してきた自分には、当然のことながらより口径の大きなTele Vue-102の撮影能力も気になっていた。そこへ、Tele Vue-102を借用する機会に恵まれ、昨年の夏にテストすることになった。

一般的な屈折望遠鏡同様、35mmカメラで撮影したときにコーナー付近の星が伸びて映らないようにするためのフィールドフラットナーを必要とする。そのため、テレビュー社の創設者アル・ナグラーはTele Vue-102専用の0.8xのレデューサー/フラットナーを設計した。このレデューサー/フラットナーは接眼部の終端に取り付け、その先端には標準規格のTリングを受けるネジが施されている。望遠鏡への取付側はちょうど2インチアイピースのようなスリーブ形状で、48mmのフィルターネジも切られている。このレデューサー/フラットナーを使用すると、35mmカメラのフレーム上で1.9°x 2.9°の視野をカバーする704mm F6.9になる。Tele Vue-102の接眼部はスムーズで、天体写真アマチュアが必要とするスムーズかつ正確な動きを提供する。

南カリフォルニアの砂漠で二晩テストできた。ターゲットはHelix Nebulae(NGC7293)とすばる(M45)だ。周辺まで丸い星像をとらえることができた。視野のほぼ全域で照度が非常に均一で、ホットスポットなどがない。ただし、Tリング開口部の内側によりコーナーがケラレる。クロッピングや後処理で対処は可能だが、やらないに越したことはない。ベテランの撮影アマチュアとしては、Tele Vue-102に2.7インチの接眼部が取り付けられることを望みたい。そうすれば、35mmカメラでのケラレを無くすだけでなく、中判カメラへの道も開ける。

全体的に、Tele Vue-102の撮影性能は申し分のないものである。口径の小さなTele Vue-85と比べても解像度が高く焦点距離も長いため、今回のような淡い対象を撮影するにはうってつけの望遠鏡である。


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* テキサス スターパーティーでの
       テレビュー102インプレッション
            
タッド・グロス (Todd Gross)


“The Nagler's (ナグラー父子)”が今度はTV-102を携えてやってきた。


星像テストでは、焦点、内外像とも非常にわずかな色しか認められない… 心持ちTV-85より少ないようだ。超高倍率を除けば、ベガを見ても色収差は判らない。月面も同じく色がない。星像テストは素晴らしいものだった。完璧に取り巻いた干渉環が焦点内/外像でほとんど対称性だ。

月は過剰倍率と言える292xでさえ、"カリッとした"曖昧さのない見え方。特に印象的だった対象は、"ダブル-ダブル"として知られること座のイプシロン。この望遠鏡はたった62x(ラジアン14mm)で明らかに分離して見えたのだ!倍率を292xや220xに上げると、淡い第一明環だけが取り巻いた4星が広い間隔でクリアに分離して見える。・・・見比べた他の2本のアポ屈折(日本製106mmフローライトとアストロフィジックスのトラベラー)より、ずっと長い時間この望遠鏡にかじりついてしまった・・テレビュー102で見たダブル-ダブルがベストイメージだ。

機械的な造作には、この望遠鏡は使う喜びがある。2インチの接眼部はトーストにバターを塗るような滑らかさで動く、もちろんそれは、わたしの所有するTeleVue-85とまったく同じフィーリングだ。2,000ドルを超える価格だが、いま買える最も高性能なアポクロマート屈折だということは、とにもかくにも、実際に見てみればすぐ分かるよ!

…タッド・グロス (Todd Gross)


テレビュー最新の屈折望遠鏡。そして、これまでで最も素晴らしい設計といえる1本だ。そのシャープな星像、無駄のないデザイン、ていねいに造り込まれたメカニズム、そして魅力的な価格など、直ちに惹かれてしまった。

接眼部は他のテレビュー望遠鏡と同じく、極めて滑らかに動く。きっちりと型抜きされた収納ケースは、まさに素晴らしい美術品。
誰しもアストロフジックスやセレストロンのフルバッフルの鏡筒が、テレビューのそれより優れていると思われるかもしれないが、事実はそう単純ではなかった。対象のコントラスト、背景の暗さ、散乱光などについては、比較した3本の鏡筒はみなよく抑えられていた。わずかな違いでさえ指摘することはとてもできない。テレビュー102の内面処理はたぶん、単純さのメリットがあるのだろう。

さそり座ν星の4つのグループは、ひとときの好シーイング下に350xをかけてちらりと見ることができた、離角がほんの0.9秒にすぎない重星。

すべての偉大な望遠鏡がそうであるようにテレビュー102も、高倍率をかけても安定して落ち着いている。わずかな残存色収差は愚かな過剰倍率においてだけ、それも、Travelerを ベガ に向けて同様の過剰倍率で観察した後の視野に感じた。実際、この強力な色収差テストは高価なAstroPhysicsが容易にTV-102を負かしたと言うことができた唯一の評価だった。実際、ほとんどすべての評価項目でサイド・バイ・サイドで比較しているにもかかわらず、相違を告げることができなかった。

鏡筒のみで2000ドルオーバー は望遠鏡としては安くない出費だが、プレミアム屈折望遠鏡世界では、むしろバーゲンといえる。新しいTele Vue-102は優れた光学と堅実なメカニズムを持った魅力的なパッケージだ。現代の優秀な4インチ屈折としての一地歩を勝ち取った素晴らしい望遠鏡。価値ある1本!

エド・ティグ (Ed Ting)


* Ed Ting氏はその後102を入手し、自身のサイトでそのインプレションを掲載しています。こちらです。



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