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米国天文誌Astronomy機材レビュー_2016年3月号 「テレビュー デライトシリーズをテストする」

このアイピースを選べば、観測のレベルを確実に上げることができる...by Tom Trusock


 アイピースは、天文愛好家にとって「宇宙への窓」である。テレビュー社は1980年代初頭、ナグラーシリーズの発売を皮切りに、高品位・広角アイピースの革新的な歴史をリードしてきた。テレビュー社を創設したアル・ナグラーは、弟子のポール・デレカイに引き継がれるまで、すべてのテレビューアイピースの光学設計を担い、同社のアイピースを世に出す原動力として活躍した。デレカイの光学設計は、デロスシリーズから、最近のデライトシリーズにおよぶ。

 テレビュー社は、ディフラクションリミテッドの光学性能、ハイコントロスト、十分なアイレリーフを備えたコンパクトかつ軽量な高品位アイピース「デライトシリーズ」を、2015年開催のNEAF直前に市場投入した。

詳細

 デライトシリーズは見掛け視界62度、アイレリーフ20mm、高さ調整式アイガード、ディオプトロクス互換という特徴を備え、まずは、7mm、11mm、18.2mmの3つの焦点距離から発売される。それぞれ、215g、205g、220gと軽量な本体は、双眼望遠鏡や双眼装置に最適。1.25インチバレルには、脱落防止のアンダーカットが施されている。

アイピースをテストするときは、望遠鏡が光学性能に付加する収差を理解するために、いろいろな鏡筒を使うことが重要だ。実際、望遠鏡に原因のある収差を、アイピースのせいにする天文愛好家を何人もみてきた。要は、アイピースと望遠鏡がひとつの光学系を構成していると理解しなければならない。よって、慣れ親しんだ望遠鏡に装着して、アイピースを慎重に評価することにした。このテストで使った望遠鏡は、口径45cm、F4.5のニュートン鏡筒 (テレビュー社製パラコア装着)、口径91mm、F7のアポクロマート屈折鏡筒、口径150mm、F15のマクストフ鏡筒だ。

望遠鏡は3本とも所定の性能を発揮したので、これから記載するコメントも均一な評価と言える。最初に観たのは昼間の景色だが、全視野で焦点が合う。すなわち、像面湾曲がほとんどないことを意味する。地域の建物をターゲットにして観ると、直線および角倍率の歪曲収差が、いずれもよく制御されていることが判る。すなわち、平行線は平行なままで、対象の比率も視野全体で保たれているということだ。

 アイレリーフが20mmあるため覗き易く、アイガードの高さを適切に調整すれば、ブラックアウトも感じない。ここ数年覗いてきたアイピースのなかには、黄色や、青みがかったものもあるが、デライトで観た明らかにニュートラルな色調が印象に残る。

 私は年齢を重ねるにつれ、視覚的な順応性が衰えてきた。個人的には受け入れがたいことだが、アイピースがパフォーカル(同焦点)設計であるかどうかを見分けるには都合がよい。デライト7mmで焦点を慎重に合わせた後、他の2本と差し替えてみたが、合焦ノブに触れることなくみごとに合焦。デライトは、昼間に使うスポッティングスコープにもうってつけのアイピースである。


夜空の下で

 デライトで覗いた夜空のコントラストはすばらしく、土星本体の縞模様をきわめて詳細に捉える。2本の小口径鏡筒でも、リングのカッシーニの空隙がクッキリとみえる。デライトには散乱光やゴーストがまったくなく、透過率も極めて高い。ぎらつきや、内部で生じる反射も皆無。私は、必要とする倍率をアイピース単体でまかなう傾向があるが、デライトの焦点距離ラインナップ(注)では、バローレンズが必要だった。その結果、バローレンズを使っても、デライトは性能を十分に発揮することを確認できた。(注):このレビュー当時は、7mmがもっとも短焦点のデライト。

 ほかのターゲットに望遠鏡を向けよう。15cmのマクストフで見る「アルビレオ」は、ゴールドとブルーの対比がしっかりと識別できる。45cmで「ヘラクレス座の球状星団」M13を捉えると、漆黒の背景に恒星がクラゲのように集合し、恒星は視野周辺までピンポイントに合焦する。

 天空に浮かぶ巨大な目玉M57「リング星雲」に向けると、最も難物の観望対象として知られる棒渦巻銀河IC1296を同じ視野に捕らえ、砂糖をまぶしたドーナツの傍らに棒状のコアをはっきり認めることができた。「まばたき星雲」NGC6826も楽しめた。青緑色がはっきりと浮かび、外側と内側の殻状の枠をしっかりと識別できる。 大口径で惑星状星雲NGC7027を観たことがなければ、ぜひトライしていただきたい。デライト18.2mmで捉えた惑星状星雲には小さく、青い双核が見え、中心よりも双核の方が強調されるも、M76の小亜鈴状星雲を思い起こさせる。

 最後に「胎児星雲」NGC7008を捉えた。この惑星状星雲の端から少し離れたところに明るい恒星が在る。サイズは大きいが輝度が低いので形状が判りにくい対象だが、デライトでクリアに見える。

大きさの比較

 デライトはいずれすばらしいアイピースだが、私の好む焦点距離は望遠鏡により異なる。いずれの焦点距離も同様の性能を発揮してくれるので、「夜空の状態に応じた倍率を選ぶ。ある望遠鏡では100倍〜200倍を選び、短焦点の望遠鏡には短焦点のデライトを使う」という具合だが、逆のこともある。

 テレビュー社では、各アイピースの視野絞径を公開している。デライト18.2mmは19.1mm、11mmは11.7mm、7mmは7.5mmとなる。実視界を度数で求めるには重要な情報だ。どの望遠鏡と組み合わせても、視野絞径を、望遠鏡の焦点距離(mm)で割り、その値に57.3を掛けて求めることができる。口径20cm、F10のシュミカセ(焦点距離2000mm)なら、デライト18.2mm、11mm、7mmで、それぞれ約0.55度、0.34度、0.21度となる。


結論

テレビュー社のラジアンシリーズが製造中止になり、多くのアマチュアはそれに代わる、軽くて、アイレリーフの長いアイピースを待望していた。高いコントラスト、十分なアイレリーフと見掛け視界を備えたデライトは、焦点距離のバリエーションを除けば、市場の要望にみごとに応えてくれる。デライトシリーズは、2016年現在、5、7、9、11、15、18.2mmの6ランナップに拡張。

最初に投入される焦点距離としては良い選択だが、高倍率を望むユーザーには、バローレンズの介在が必要。もちろん、テレビュー社はこれを百も承知だ。

 またしても、惑星とディープスカイのいずれでも活躍するオールラウンドな高性能アイピースがテレビュー社から登場した。ロングアイレリーフ、コンパクトサイズ、軽量設計、比較的安価な価格帯がセールスポイント。次のスターパーティでは目が離せない存在である。


デライトの設計社ポール・デレカイ。前身のイーソス、デライトの光学設計も手掛ける。