テレビュートップ

アイピースの選び方

ステップ・バイ・ステップ その1


米国テレビュー社創設者 “アル・ナグラー”の

プロフェッショナルアドバイス


  


アル・ナグラー


 ご存知のとおり、テレビュー社の創設者である。若くして天体観測に興味を抱き、アマチュア時代に自作の 30センチ ニュートン式望遠鏡がステラファンのコンクールで優勝。1957年から1973年、ニューヨーク州、バハーラにあるフェランド・オプティカル社のシニア光学設計者として勤務。同社はNASA(米国航空宇宙局)にビジュアルシミュレータを供給。そのときアル・ナグラーは、ジェミニとアポロのディスプレイ装置を開発する。このビジュアルシミュレータは大型ミラーを用いて地球の軌道、ドッキングの様子、さらに月面着陸のイメージを投影するもの --- 月面着陸の様子は、高度な「オプティカルプローブ(光学系を利用した宇宙探測機)」、テレビカメラ、その他の光学系を月面モデルに降ろすことでシミュレートされる。1977年、テレビュー社を設立して以来、米軍、航空会社などの光学設計を手掛ける一方、NASAでの貴重な経験をベースに天体観測の世界にも宇宙遊泳の感覚「スペースウォーク」を再現したいと願い、独自の望遠鏡、広角アイピースを開発。同社の製品はオリジナリティに富み、アル・ナグラーの独創的なコンセプトに基づいて設計されている。

 ここでは、アル・ナグラー自身が、お手持ちの望遠鏡のためのアイピースの選び方について、ユニークな指針を展開してくれる。カタログから見栄えのいいアイピースを選ぶように単純な話ではないが、望遠鏡が集光した光を収集するためのサイエンスをベースに、アイピースを選ぶプロセスの重要性が語られている...Amateur Astronomers Association of New York、2014年5、6月号より


アイピースの選び方 - ステップ・バイ・ステップ(その1)...Al Nagler

 望遠鏡は、上図のようにカメラレンズのような存在です。カメラや、CCDカメラで撮影できるよう、焦点面に像を結びます。カメラの代わりにアイピースを装着すれば、像に倍率を加えてみることができます。アイピースの焦点面が、望遠鏡の焦点面と一致したところで像が結び、無限遠に投影された像を目で観ることができます(下図参照)。望遠鏡に飛び込んだ並行光束が、アイピースの外に並行光束で出て行きます。

 対物の光束の直径の比率、すなわち、対物とアイピースの焦点距離の比率が倍率を生み出します。上図にあるように、アイピースからは対物自体が見え、アイピースの外に小さな像を結びます。アイピースが出てくる像のことを「射出瞳」と呼びます。お手持ちの望遠鏡が反射望遠鏡なら、射出瞳を少し離れたところから観ると、射出瞳の中心に暗い円が見えますが、その円は反射望遠鏡の副鏡、すなわち中央遮蔽です。

 アイピースのアイレンズから射出瞳までの距離を“アイレリーフ”と言います。また、望遠鏡からの最大の“実視界”は、アイピース/対物の焦点面にある“フィールドストップ(視野環)”の直径により制限されます。すなわち、フィールドストップの直径が最大実視界になります。“実視界”はアイピースにより無限遠に投影され、自分の目を射出瞳に置いたとき、こんどは“見掛け視界”と呼ばれるようになります。

 低倍率アイピースは明るい像を生成します。アイピースの焦点距離が長くなるほど、射出瞳は大きくなります。低倍率アイピースでは、月、惑星、銀河など、面積のある天体は最も明るくなりますが、恒星の明るさは射出瞳が小さくなっても変わりません。倍率を上げ、射出瞳が小さくなると、夜空の背景は暗くなり、星野のコントラストが上がり、淡い恒星が見えるようになります。高倍率アイピースのフィールドストップ径が同じなら、見ることのできる実視界も同じです。下図では、アイピースのフィールドストップの直径が同じなら、実視界も同じである、という前提で、見掛け視界が50°のときと100°のときの違いを表しています。


はじめに - どの天体を観るか

1.フィールドストップの最も大きなアイピースを選んで、実視界を最大にする

 中央遮蔽により射出瞳に黒い円が生じると邪魔になるため、射出瞳が7mmを超える焦点距離のアイピースは選ばないようにします。屈折望遠鏡なら、フィールドストップの広い低倍率アイピースで射出瞳が大きくなっても、このような問題はありません。一般的に、広視野の天体には、天の川、“プレセペ@1°”、“プレアデス@2°”、“ヒアデス@5°”などのような散開星団、“アンドロメダ@2-3°”のような大銀河、“北アメリカ@3°”、“ベール@3°”、“オリオン@1°”などの星雲があります。





2.惑星、二重星、惑星状星雲などのために倍率を最大にする

 ここでは、広い見掛け視界/実視界は不要のように思えますが、自動追尾のない架台+望遠鏡(たとえばドブソニアン)には役立ちます。




3.球状星団には125x から150xのアイピースも良い選択

 著名な天体観測家であり望遠鏡ディーラーのドン・ペンサック氏は、一般的な天体望遠鏡では、同じ見かけ視界のアイピース群(たとえば、プルーセル:50°、ナグラー:82°、イーソス:100°など)を揃え、50x、100x、150x、200x、250xと、不等間隔の倍率になる焦点距離を選ぶことを推奨しています。ただし、惑星を観察する高い倍率域では、大気の状態(シーイング条件)により最適な倍率を選ぶのが難しくなります。そのようなときは、焦点距離を8-24mm、3-6mm、2-4mmのように1本のアイピースで変えることのできるズームアイピースを選ぶ方法もあります。ちなみに、50倍で射出瞳が5mm(250÷50)の口径250mmの望遠鏡なら、ドン・ペンサック氏の推奨間隔で射出瞳を算出すると、5mm、2.5mm、1.67mm、1.25mm、1mmと、理にかなったレンジになります。

4.必要なアイピースの本数

 ドン・ペンサック氏は、口径250mm、f5.5、焦点距離1,270mmのドブソニアンに必要なアイピースの焦点距離として、25.4mm、12.7mm、8.5mm、6.35mm、5.1mmを推奨しています。ここで、中・低倍率の実視界を広げる一方、高倍率では柔軟に選ぶことで、より効率的なアイピースの選び方も紹介します。たとえば、見掛け視界100°のイーソス21mmで60.5倍、射出瞳6.2mm、実視界1.9°、あるいは、見掛け視界82°のナグラー31mmで44倍、射出瞳6.2mm、実視界1.9°をカバーします。次のステップとして、見掛け視界100°のイーソス13mmで98倍、射出瞳2.6mm、実視界1°、見掛け視界100°のイーソス8mmで159倍、射出瞳1.6mm、実視界0.6°をカバーします。最後に、焦点距離3-6mmのナグラーズームで212倍〜424倍をカバーします。

 口径250mm、f10のSCT鏡筒の場合、ナグラー31mmとイーソス13mmの2本だけで、それぞれの実視界1°と0.5°で最も高い倍率になる82倍と195倍が得られます。31と13で少し紛らわしい数字の組合せです。ただし、理想的には、実視界1.04°、62倍のパンオプティック41mm、実視界0.67°、150倍のイーソス17mm、212倍のデロス12mmの3本です。

アンドロメダ大星雲。双眼鏡で観ることもできるが、望遠鏡の方がよい。画像右上には、あの「パンスターズ彗星が見える」

 口径127mm、f5.2の短焦点660mm、広視界の屈折望遠鏡TV-127の場合、その広い視界と、高倍率の潜在能力を活かすために、アイピースを5本用意します。まずナグラー31mmで実視界3.6°、21倍、射出瞳6mm。イーソス13mmで実視界1.94°、51倍、射出瞳2.5mm。イーソス6mmで実視界0.9°、110倍、射出瞳1.2mm。つぎに、散開星団をとらえる中倍率アイピースとして見掛け視界110°のイーソスSX4.7mmを選びます。140倍にもかかわらず0.78°の広い実視界が得られます。さらに、惑星状星団や球状星団を高倍率で観るためにナグラーズーム2-4mmを選べば、165倍〜330倍をすきまなく埋めることができます。


アイピースの選び方 - ステップ・バイ・ステップ(その2)...Al Nagler

アイピースの選択肢

 アイピースの選択をシンプルにするのも、テレビュー社の大切な目標です。数年前、この命題を「人工知能」によって解決できないかを試みたことがありますが、テクニカル、人間工学、コスト、望遠鏡の用途などが広範囲にわたるため断念しまいた。同じ命題にチャレンジしている方が、読者のだれかにいるかもしれません。

 一方、テレビュー社のホームページには、各アイピースの倍率、実視界、アイレリーフ、射出瞳などの数値をリストし、任意の口径・焦点距離の望遠鏡やバロー拡大系と組み合わせる際に役立つ「アイピース計算機」を掲載しています。それぞれの数値はさておき、アイピースを正しく選ぶために、ふたつ下の図にあるA.〜Eの要素も検討に加えてください。

 まずはどの天体を観たいのでしょうか。たとえば、星野なら見掛け視界のとても広いアイピースが必要ですが、惑星ならそれほどの広さは不要です。地上観測はその中間あたりでしょう。

 高倍率観望は常に大気の状態(シーイング)により制限されます。一般的なシーイング条件は分解能を約1/2秒に制限します。透明度と大気の安定性には、多くの場合、相反する要素があります。冬の暗く、クリアな夜空で光り輝く星々と、靄がかかっても、気流が安定した夏の夜空でより良く観える惑星がその例です。もちろん、亜熱帯にあるフロリダのウィンタースターパーティに行けば、大気汚染がなく、気流が安定し、透明度の高い冬の夜空を楽しめます。

 望遠鏡のF値しだいでは、視野全域でシャープな像を結ぶアイピースと、F8以上の望遠鏡でなら隠すことのできる収差のある比較的安価なアイピースの差がはっきりと判ります。口径が一定なら、F値が小さいほど実視界を広くとることができ、ディープスカイやネイチャー観測に向いています。ニュートニアンやドブソニアンなどの場合、パラボラにより生じるコマを補正するパラコアなどのコマコレクターを使えば、眼視、撮影とも、視野周辺までシャープな像を得ることが可能です。


 アイピースの品質について考えることは、観望家にとってとても重要です。アイピースを選ぶときは、アイレリーフ、見掛け視界、人間工学的見地(形状、重量等)など、それぞれの人の好みが反映します。多くの場合、メガネを掛けて覗くかどうか、110°もの広い見掛け視界で「スペースウォーク」を楽しみたいのかが選択の分岐点になります。また、見掛け視界を狭くしてコストを抑えたアイピースか、広い見掛け視界の比較的高価なアイピースを選ぶかなどです。

 アイレリーフの長いアイピースなら、目の乱視を補正できるディオプトロクスが使用可能になり、迷光をより減少できるなど、メガネを掛けたままアイピースを覗くより、光学的メリットがあります。

その他の考察

 クリアさ、広視界、ナチュラルな見え味の最高峰をめざす「コストを度外視したアイピース」があります。一生のなかですばらしい体験に出会う価値のこと、あなたを楽しませてくれる最も大切な天体を観るために必要な質の高いアイピースは数本だけであることを考えてみてください。価格がほどほどのアイピースでも、シャープネスとコントラストをハイレベルに保ちながらも、広い見かけ視界を実現することができます。最近は、より安いアイピースでも、F値の大きな望遠鏡でならその性能も悪くありません。

 パフォーカルとは、アイピースを交換しても大きくピント位置を再調整する必要のない特性を意味します。公称はパフォーカル設計のアイピースでも、わずかな焦点の合わせ直しは必要です。

双眼装置はナチュラルな見え方を最大限に高めてくれます。入射光は2つの光束に分かれるため明るさは低下しますが、コントラストが失われなければ、淡い恒星や星雲の詳細は除き、両目で観ることで明るさの低下は補われます。コントラストは高まり、目の浮遊物もみえにくくなり、月、惑星、星団(なかでも球状星団)などは驚くべき立体感でとらえます。疑いを持つひとは、片目をつむってみてください。両目を開けてみたときの、快適さを実感するはずです。双眼鏡で試してみるのもよいでしょう。双眼装置は理論上、左右の目に同じ像を結びます。天体には近距離対象のような視差がないのに、どうして立体感をもって天体を観ることができるのでしょう。「脳のなかでは、アイピースのフィールドストップが、見かけ上60cm〜90cm離れた“窓”の役割を果たし、その窓を通して脳は夜空の背景(闇)をもっと離れた存在として“解釈”する」というのが、私がスターパーティで考えついた理屈です。

 光路長が127mmある一般的な双眼装置を装着したときに合焦させるためにバローレンズの助けが必要になりますが、シュミットカセグレン鏡筒のような望遠鏡なら、バローレンズ無しで合焦させることが可能です。テレビューの2倍合焦レンズにより、500mm f5の望遠鏡が1000 f10の望遠鏡になり、双眼装置で生じる収差をすべて補正します。

バローレンズや、バックフォーカスが異なっても同一倍率を維持しイメージング時に改善をもたらす4枚バージョンのパワーメイトを使えば、ほとんどの場合、アイレリーフを保ちながら、お手持ちのアイピースの倍率を上げることができます。こうした拡大光学系を使うと、コストをセーブし、3本のアイピースで6本分の役割を果たしてくれますが、差し替えや合焦のやり直しなどで面倒な操作が伴います。個人的には、アイピースの数を少し増やしても、軽量で、光学系を簡素化する方を好みます。

 ズームアイピースは便利であることは確かですが、ほとんどの場合、ズーム動作するたびに合焦をやり直す必要があり、低倍率域では見掛け視界が狭くなり、期待外れな結果になりかねません。高倍率で惑星を観測する場合、ナグラーズーム3-6mmならズーム動作で合焦位置が変わることがなく、低倍率域でも見掛け視界は狭くならないので、高性能な単焦点アイピースの代わりになりえます。ナグラーズームはそのときの大気状態に合わせて最適な倍率を得ることができ、倍率の目安となるクリックストップ機構も備えています。

 アイピースのサイズと重さは小さな望遠鏡のバランスを崩し、収納も難しくなることがあります。鏡筒バンドを前後にスライドできる望遠鏡か、鏡筒にスライド式カウンターウェイトが装備されていれば、電動架台の赤経・赤緯軸がストールしてしまうこともありません。

 2”および1 1/4”アイピースにはあらゆるフィルターを使うことができます。フィルタースライドや、2”ダイアゴナルに2”フィルタを装着しておけば、2”、1 1/4”フィルターをアイピース自体に装着することなく、フィルター効果を楽しむことができます。

 どのアイピースを、何本選ぶかは、個々の判断によりますが、最大実視界、望遠鏡で惑星を観るときの最高倍率、大気の条件を最大限に活かすには、低倍率はフィールドストップ径を1.7x〜2.0xの間隔で、ズームアイピースなどを用いた高倍率では1.3x〜1.5xの間隔で、アイピースを数本選びます。先に述べた解説を参考にするか、代理店等に問い合わせてみてください。乱視がある場合は、アイレリーフが17mmを超えるアイピースで眼鏡を掛けたまま覗くか、オプションでディオプトロクスを活用します。ディオプトロクスのアイガードは高さを変えられるので、快適に観望できます。

 マルチコートが施された最近のアイピースの透過率は非常に高くなっています。コーティングとガラスの種類によりますが、アイピースにより暖色または冷色へのトーン傾向があり、最近のアイピースは冷色の傾向があります。ただし、通常の観望レベルなら、問題にはなりません。

収差

 アイピースの収差は、製造ではなく、アイピースの光学設計に依存します。アイピースで球面収差が見られることはほとんどありません。これは、アイピースの視野中心なら、シャープネスの違いがほとんどないことを意味します。

 下の図は、多くのアイピースを、よく収差補正されたフラットフィールドF5.5屈折望遠鏡に装着して行ったテスト結果です。20°軸を外れた結果だけをみると、その違いは劇的です。これは違いを明らかにするあめの非常にセンシティブなテストです。通常の見え方を拡大したとしても、軸上であれば20°の領域でこのような違いをみることはできません。ただし、広い視野で軸を外れた領域では、とりわけF値の小さな望遠鏡に、良好に収差補正されたアイピースを装着すれば、主に非点収差が原因となる像不良が判るでしょう。像面湾曲は、アイピースと望遠鏡の設計に依存し、アイピース/望遠鏡の組み合わせしだいで、助長されることもあれば、打ち消し合うこともあります。「アイピースと望遠鏡の両方の視野がフラットなら、望遠鏡のF値に関係なく、焦点面が一致すれば、視野全体でシャープな像を結ぶことができる」というのが私の考え方です。視野のグリッドパターンが「樽型」か「糸巻型」のどちらかなため、像面歪曲が像面湾曲と誤解されていることもあります。この収差はアイピース特有のもので、通常、広い見かけ視界のアイピースで顕在化します。シャープネスや、その他の収差とは関係なく、おそらく、望遠鏡を動かしながらアイピースを覗かなければ決して判らないでしょう。収差補正のレベルは、今日のコーティング技術とともに、「スペースウォーク」を体感するに十分なところまで到達していると思います

 ニュートニアン、ドブソニアンなど、パラボラミラーを使うことで生じる収差はコマですが、通常、アイピースにより顕在化することはありません。アイピースがどれだけパーフェクトでも、F値の小さなドブソニアンの視野周辺で彗星を観測したい人はいないはずです。上の表は、コマを補正することで星像パターンの「スポットサイズ」をどれだけ小さくできるかを示しています。これにより、ベストアイピースのパーフェクトな特性に挑むことのできる、ほぼパーフェクトな広視野・大口径反射望遠鏡の完成です。図の表では、F4ミラーの視野中心からわずか1mm外れると星像が劇的に劣化し始めることが判ります。一方、コマ補正光学系「パラコア2」を併用した場合、視野中心のすばらしい星像を視野全体で保つことができます。


アイピースの選択は複雑にみえますが、基本的な知識を学習しておけば、最初から戸惑わずに済みます。アイピースを何本も持ち、とりわけ、高倍率アイピースを何本も所有するユーザーの多くと話す機会がありました。テレビュー社のホームページには、たくさんのアドバイスが掲載されています。とりわけ、さまざまなアイピースに対し、望遠鏡の口径と焦点距離を指定して、倍率、実視界、射出瞳径を瞬時に求めることができる「アイピース計算器」は便利かもしれません。もちろん、スターパーティや観望会などでいろいろなアイピースを試すとか、テレビュー代理店に問い合わせてみるのもよいでしょう...アル・ナグラー




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