テレビュー社(米)の歴史

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「パーフェクトな」望遠鏡...

1982年、 TeleVueによる最初の望遠鏡が "MPT Multi-Purpose-Telescope(多目的望遠鏡)"として発表された。これは口径5インチ、f4の屈折望遠鏡で509mmの有効焦点距離を有している。MPT望遠鏡は、従来からの使い方だけでなく、新しい TeleVueアイピースの品質管理テスト用としても使うために設計された。最初に作られたMPTはf4でのテストのため TeleVueのサービス部署に残っているが、またその後、アイピースのダストやスクラッチを調べるために虹彩絞りがf20にセットされた。

TeleVue MPT 5 inch f4 telescope

上 :TeleVue 5インチf4 MPT
   光学チューブ(鏡筒)後端付近にある虹彩絞りに注目 
  <写真提供:TeleVue Optics>

アル・ナグラーの特許による "MPT"は、"Petzval(ペッツヴァール)"の概念に基づく4エレメント設計である。 TeleVueの望遠鏡の幾つか(101mm及び140mm望遠鏡を含む)はMPTに由来する。望遠鏡の前端に置かれた2枚構成の分離式でアクロマチックな対物レンズが、その透過光を、鏡筒後方で接眼部の前方に位置するダブレット・レンズへ送る:このダブレット・レンズ群は、1)有効焦点距離を縮小するという機能、及び2)像面湾曲を減少もしくは除去するという機能を有する。このMPTには、2インチ接眼部、2インチから1.25インチへの変換アダプターが備えられた2インチ・ダイアゴナルミラー、20倍及び70倍となるTeleVue Plosslアイピース、三脚アダプター、及び運搬用ケースなどが装備されている。望遠鏡の重量は12lbs、長さはたった33インチであった。幾つかの運のよいバイヤー達は、このような機材の視覚的魅力を保存してくれていた(売れ残っていた)。5インチf4のMPTは1982年の7月までおよそ1975ドルで販売されていたが、当時f11からf15以下の大口径屈折望遠鏡は市場にほとんど存在していなかった。

1983年までに、アル・ナグラーは、多くの観測者にとってパーフェクトな望遠鏡とはどんなものかということについての彼のヴィジョンを再定義していた。他の人気のある望遠鏡デザインと比較してみると、屈折望遠鏡は最も自然で、ハイコントラストで、より明るい対象には3次元的な視野を提供する。確かにそれらはこれまで、プロの眼視観測天文学者の選択となっていた。TeleVue MPTのような望遠鏡よって、DeepSky の観察やそれ以上に撮影などに屈折望遠鏡を用いるなどのコンセプトが証明された。また、充分に大きなミラー望遠鏡(鏡を用いた望遠鏡)を作ることができるまでは、屈折望遠鏡がそれらに匹敵するものとなることを証明した。なぜなら、ミラーシステムによる実視界は比較的狭いものとなるからである。

しかし、この頃までのほとんどの屈折望遠鏡は、どちらかと言えば比較的狭い実視界を生む高倍率用の機材であった。最近の光学分野での革新により、これまで一般的だったf12からf15のアクロマートに較べて、比較的明るいf9程度の望遠鏡が出来るようになった。このことは、より DeepSky観察に適した広い視野角を可能とした。TeleVue MPTは、まさにf5の屈折望遠鏡がどの程度実用的で多機能なものとなり得るかというアル・ナグラーのヴィジョンにとっての格好の試験台だったのである。しかしながら、市場での位置付けはまだ確信の持てるものではなかったし、無くては成らないマーケットシェアを得るためにはMPT5インチ望遠鏡はあまりにも高価だった。従ってナグラーは代案の仕事に取りかかった。


美しいパフォーマンス

ハレー彗星の飛来に時を同じくして、 TeleVueは20世紀の光学と、真鍮という19世紀の外観を兼ね備えた新しい望遠鏡の名前を決めるコンテストを行うことを発表した。かくして1984年、美しい外観を持った口径4インチf5.5の "Renaissance"望遠鏡が誕生した。リビングに居ながらにしてあたかもパーソナルな観測所に居るような気分にさせる望遠鏡、Renaissance(及び、現存する一層進化した後継機種)は、市場の真鍮製望遠鏡の多くが視野が狭く機能性に富まない平凡な小口径なアクロマート望遠鏡の典型であったのに対してユニークな存在であった。その一方で Renaissanceは大変広い倍率レンジと視界のレンジを有する口径の大きな望遠鏡であり、カメラやビデオによる撮影も可能とする機能を持っていた。 Renaissanceは、10倍での5度に及ぶパノラミックな視野と、倍率を286倍にまで上げて惑星の主要な特徴を明瞭に示したり、多くの DeepSkyの不思議を識別したりといった(非常に多機能な)能力を有している。12lbsの望遠鏡(2インチ・ダイアゴナルを含む。鏡筒単体では10lbs12oz)は、標準装備のケースに入り充分コンパクトなため、ほとんどの主要な民間旅客機に持ち込むことができる。但しオーバーヘッド・コンパートメントが珍しく小さいL-1011型機は唯一の例外である。1984年11月まで、この望遠鏡の販売価格は2インチ・ダイアゴナルとPlossl-26mm、及びハードケースが付属されて895ドル!だった。

TeleVue Renaissance telescope cross section drawing

上 :TeleVue "Renaissance" 550mmf5.5アプラナート望遠鏡,U.S.Patent #4400065
1. 分離式ダブレット対物レンズ、2. 鏡筒バンド、3. 後群張り合わせダブレット・レンズ
2. 2インチ接眼部、5. 2インチ・ダイアゴナルミラー、6. 2→1.25インチアダプター
7. アイピース(Plossl-26mm)
  <資料提供:Martin Cohen>

1984年及び1985年に製造されたプロダクション・モデルは、ハレー彗星のイベントを書き記す小さな胸章を得た。雑誌"Modern Photography"1985年3月号において、解像度テストで"excellent"の評価を得、コントラストで"High"の評価を受け、通常のカメラレンズを超えるイメージ・クオリティを有すると賞賛されたのは、"Renaissance"(Serial No. 1019)であった。また、我々が驚いたことには、1986年、雑誌 "Audubon"が、それを野鳥観察望遠鏡の比較調査の中で最も優れた屈折望遠鏡としてレイティングしたことだ。(コンパクトなマクストフ・カセグレン望遠鏡である"Quester Field Model"が全ての中でトップの選択にレイティングされた。);しかし我々には、これらの望遠鏡を遠くまで運んで行くバードウォッチャーが本当にそれほど沢山いるのかどうか、にわかには信じられなかった。

TeleVueは当初、 "Pan Head Mount"と呼ばれたカメラ三脚のヘッド部分を木製三脚に組み合わせた軽量なものを提供した。しかし、このマウントは天体観察での使用には適していなかった。そこですぐ後になって TeleVueは、当時から今日までほとんど改善する必要なく継続的に生産されることになる新たなマウントを発表した。それが "Panoramic"マウントである。いかなる観察姿勢にあっても理想的なバランスが取れるよう、望遠鏡の重心点をクレイドル・ヘッドで支えて使うという驚くほどシンプルなマウントである。垂直方向には地平線下から仰角85度まで、水平方向には360度の滑らかな回転ができるよう、垂直回転方向に真鍮のベアリングを、水平回転方向にはナイロン・ベアリングを用い、マウントヘッド部分はアルミニウムの削り出しから作られる。垂直回転方向軸に設けられたクラッチによって、接眼部に付けるアクセサリー類の荷重変動を補整するように作動し、また、水平回転軸と同様に望遠鏡をある方向に固定することも可能である。望遠鏡を動かす高さは3フィートから5フィートの間で調整できる。 "Panoramic"マウントは、その重量やどちらかと言えば複雑な赤道儀を使用するのにうんざりしている人達にとって、ポータビリティと運用の容易さという問題を解決することとなった。またそれは、地上観察に用いた場合、赤道儀はもちろん一般的なカメラ三脚よりずっと快適なものを提供した。TeleVueはこれに続いて、さらに剛性が高く、4インチ望遠鏡を特に高倍率で用いる場合に適合したデザインのマウントを提供した。 "Gibraltar"マウントである。これら2つのマウントは現在でも生産されているが、美しいトネリコ材の三脚に自然な黒色トリムを組み合わせたものと、真鍮の軸受けや真鍮のトリムを施しクルミ材の三脚で仕上げたものから選択できるようになっている。(トネリコ材とは野球のバットを作るのに用いられる硬い木材のことである。) "Gibraltar"マウントが発表されて以降、マウントのヘッド部分は、TeleVue や第三者などによって提供されている"Digital Setting Circle"用CPUを用いるためのオプションのエンコーダが装着できるように工夫されている。これは夜空をナビゲートしてくれるもので、特に郊外などの観測地からでは探すのが難しいような対象を望遠鏡の視野に導入する手助けとなるものである。

上 :オプションの赤道儀に載せられた TeleVue "Renaissance" 550mmf5.5望遠鏡
  <写真提供:TeleVue Optics>

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Renaissance望遠鏡は当初、不似合いな安価なドイツ式赤道儀に載った写真で紹介された。しかし、この望遠鏡にうまくマッチした適切なマウント(架台)を用意することは簡単なことではなかった。赤道儀を望んだカスタマー達は、当初自分たちの機材(架台)に取り残された。1985年1月、 TeleVueは Vixenの"Super Polaris"マウント(この人気のあるドイツ式赤道儀は Celestron社から販売されていた)の所有者達が "Renaissance"を載せられるようなアダプター・プレートを発表した。多少の調査を経て、TeleVueは日本製("Carton"製)の RSM-2000というシステム型ドイツ式赤道儀の販売を行うようになった。米国製トネリコ材三脚( "Gibraltar"マウントとセットで販売されているものと同じ)またはアルミ伸縮式三脚、レチクル照明付きの内蔵極軸望遠鏡、バッテリー駆動のモータードライブ等のオプションを含めたモジュール式アプローチを提供した訳である。この架台は両軸にクラッチを採用し、手動による微動を行えることが特徴であった。